・スタディ!
・第9話 ふたりっきりの時間



「やーれやれ……」
 とある10月も半ばのある日の放課後。一仕事終えたかのようにつぶやいた和弥が、誰もいない教室に戻ってきた。いつもはスーツ姿の和弥も、この日は上下ジャージ姿。何でそんな格好をしているかと言えば、運動会が近づいてきて学年で全体練習をしているので、そのためなのだ。
 というか、和弥は体育の授業の時はジャージにきちんと着替えるし、それが終わったら再びスーツ姿になるという、律儀なことをしているのだ。ただ、さすがに夏場や汚れた時はそのままだったりすることもあるが。
 それでも、ジャージもいつもキレイにしてるし、自分に似合う着こなしが出来ているせいか、他の先生から「何で籠原先生は、ジャージでもカッコイイんですかね?」と言われる事もある。体育会系の先生にも和弥に「どーやったら、そんなカッコ良く着れるの?」と聞かれたことがあるくらいだ。
「ふー……」
 上着をイスにかけてTシャツ姿になる。息を大きく吐きながら教室の自分のデスクに座り、運動会の種目の一覧を手に取って眺める。
「おれのころも、だいたいこんなことしてたよなぁ」
 だいたい、運動会でやることは決まっているもので、必ず学年ごとにダンスをやったり組体操をやったりする。6年生の今年は組体操をやることになっていて、今日の午後は授業を全部つぶしてそれの全体練習をしていたのだ。
「うちのクラスは、みんなよく出来てるよなぁ……。えらいよなぁ」
 デスクの上に置いてある、組体操の演技の書類を見て和弥がつぶやく。
 まだまだ息が合ってないクラスもある中、和弥のクラスはなかなかのまとまりを見せている。和弥がきちんと統率できている面もあるのだろうが、それ以上にクラスの生徒みんなが普段からよくまとまっているのが大きいのだろう。
「ほかのも、特に問題はないかなぁ?」
 クラスごとの練習もきちんとやっているし、組体操だけではなくて他の種目の練習や、クラス対抗リレーなどの競技に出る生徒の選抜なんかも行った。
 クラスで抜群に早い生徒をそれぞれ選抜させるから、クラスの対決になって毎年盛り上がり、ある意味「担任の対決」にもなってしまう。先生によっては、勝ち負けでメシや飲みを奢る賭けをしている人もいるらしい。
 そんな運動会も迫っているので、現在この学校はその準備に余念がない。
「使うものは全部出したし、あとは設営かぁ」
 全体練習が終わってすぐに、生徒は役割ごとに打ち合わせがあり、その打ち合わせに関係のない教師は使う道具を倉庫から取り出す作業があった。クラスの1/3くらいの生徒に役割が与えられ、応援団や競技が始まる前の呼び出し、生徒を入場門前で整理する係、教師と一緒に本部に詰めて運営を進める係、そして放送部が中心となった放送をする係と役割がある。
 全体練習が終わった時点で校庭で終了のホームルームをしてしまったので、役割を持ってない生徒は教室に戻って着替えて帰っただろうし、役割を持っている生徒も打ち合わせが終わり次第、順次帰っていったはず。
 教師の荷物出しも1時間ほどで全て終わって、あとは和弥ら若い教師が中心で道具の入っていた倉庫の掃除をしていた。てことで、全体練習が終わって1時間半ほど経った学校。もう、生徒もクラブ活動をしている生徒以外はほとんどが帰っているようで、学校の中はシーンとしていた。
「ウチのクラスも、みんな帰ったかな?」
 そう思って、生徒の机を一通り確認する。机の横にランドセルがなかったら、間違いなく帰ったのがわかるのだが、ひとつだけ、それもよ〜く気にすることが多い場所に赤いランドセルが残っていた。
「……美穂がまだ帰ってないじゃん」
 あらまぁ、という口調で和弥がつぶやく。美穂の役割は保健係で、競技中にケガをした生徒に処置をしたり、保健室まで連れて行く係だ。教えることが多いから、打ち合わせも長くかかることが多いとは本人から聞いていたけど、まだ戻ってきていないとは思わなかった。
「んー、まぁ、まだ日が暮れるまで時間があるから大丈夫だけど……」
 そう思って自分のデスクに戻りかけたところ、廊下の遠くの方から、足音が聞こえてきた。もしかして、という気持ちもあって、和弥は教室から顔を出してその足音の主を確認する。
「あ、……せんせい」
 ちょっと遠くに見えたその足音の主は、やっぱり美穂。美穂も教室から出てきたその顔を確認すると、にこっと微笑んで早足になってこっちに向かってくる。和弥もくすっと笑って、美穂がやってくるのを待つ。
「打ち合わせ、終わった?」
「はい、30分くらい前に終わったんですけど、保健の先生とお話してたんで遅くなっちゃいました」
 にこにこと、うれしそうな顔で話す美穂。さっきも書いたけれど全体練習が終わってすぐに打ち合わせがあったので、まだ美穂は体操服のまま。校庭で練習をしたせいで、ちょっと体操服が砂埃で汚れているような感じだった。
「せんせいは、お仕事終わったんですか?」
「うん、運動会で使うものは全部出したから、今日のやることは全部済んでるよ」
 和弥は教室の自分のデスクに座り、美穂もその横に置いてある椅子に体操服のまま座って、ふたりで楽しそうにおしゃべり。こういうことがないと、なかなかふたりっきりでおしゃべりすることも少ないから、お互いに楽しいのだ。
 それに、運動会に向けてのことやその他いろいろな事があって和弥も忙しく、実のところ2学期に入ってからはふたりっきりになることが少なかった。肌を重ね合わせたのも、9月上旬に1回あってそれ以来なのだ。
「美穂、これからどうするの? すぐ帰る?」
「えーと……。せんせいは、どうするんですか?」
「んー。もう今日の仕事は何もないし、終業の時間までこれといってやる事もないかなぁ?」
 忙しい忙しいとは言っても、その忙しさにかまけていたわけでもなく、書類の整理や教材の準備、その他雑務などはきちんとこなしていた。だから、今日特にやっておく仕事というのもなかったし、実際問題「終業まで何しよう?」という感じだったのだ。
「えと、その……。……せんせいがよかったら、……えっちしたいです」
 ちょっと恥ずかしそうに、上目遣いで美穂がつぶやく。ここのところ一緒にいることが少なかったから、美穂も寂しかったのだ。美穂もそういうことをするのは嫌いじゃなく、むしろ好きな方。こういう「教師と生徒」という関係だから、和弥も積極的に誘う事は少ないのだが、美穂から「誘われる」ことは間々ある。もちろんそれは、相手が和弥であるからなのだが。
「……いいの? 今日、練習してて疲れてない?」
「大丈夫です。それよりも、せんせいと一緒に居たいです」
 ふるふると首を振って、美穂がいう。
「あ、でも、……わたし汗かいてるから、……その」
 ふと気付いた美穂が、困った顔になる。
「はは、大丈夫大丈夫。先生は、そういうことは気にしないよ」
 美穂の頭をぽむぽむっと撫でて、やさしく言う。
「えと、ほんとですか?」
「うん。それを言ったら、先生だって今日は汗かいてるし、ホコリまみれだと思うよ。……美穂は、それでも大丈夫?」
「あ、大丈夫ですよ。わたしも、そういうことはあんまり気にしないですから……」
 にこっと笑った美穂の顔を見て、和弥もうんとうなずく。じゃ、決まりだね、というふたりの表情。
「じゃあ、どうしようかな……。んー、あ……」
 和弥が、うん、と考えてポケットに手を入れたとき、ふと気が付く。
「え? どうしました?」
「倉庫の鍵、ひとつ返さないで上がってきてたなぁ……」
 ポケットから、いくつか鍵がぶら下がったキーホルダーが出てくる。
 運動会の備品を置いてた倉庫の鍵は職員室のキーボックスに保管してあって、それはきちんと返却したのに、もうひとつ、あまり使わない方を返却せずに持ったままだった。
 まぁ、もう全てのものは確実に出しているわけだし、普段使わないものが入ってる倉庫の鍵を集めたものだから、今のところこれがなくて特に困ると言うことはないだろう。だいたい、こっちの鍵は今日は使っていないし。
 そのいくつかの鍵を眺めて、和弥がふと言う。
「……予備品倉庫に行こうか?」
「予備品倉庫、ですか?」
「うん、体育館の横のプレハブと、旧校舎の間にあるとこ」
 体育館の横にプレハブが2つあるのだが、そのさらに隣にちょっと古いコンクリート作りの小さい倉庫がある。ちょうど、旧校舎の裏に隣り合うようにして建っているのだが、そこに滅多に使わないものがいくらか置いてあるのだ。何でこんな建物があるか調べたところ、旧校舎をまだメインで使ってたころ、ここに配電盤等の機器があったそうなのだが、工事をしてそれを移設したのでがらんどうになったらしい。それを、結局は倉庫として使っている。
 さらに言うと、隣のプレハブはパイプイスや長机がたくさん保管してあり、そのおかげでこの予備品倉庫は全然目立たないのだ。まぁ、なんていうか、都合がいい。
「荷物全部持って、一緒に行こうか? そのまま帰れるようにね」
「はい、わかりました」
 美穂が体操服のまま、ランドセルと私服が入った袋(本来は体操服を入れる袋)を持って、和弥と一緒に校舎を1階へ降りていく。特にクラブ活動をしていない美穂が、こんな時間に体操服のままランドセルをしょっているのだから、ちょっと不自然なのであまり見られたくはなかったのだが、生徒はまったくと言っていいほどいないし、教師の姿もかなりまばらなので、ふたりの姿を見られることはなかった。

 階段を下りたところのすぐにある、旧校舎へ向かう渡り廊下の途中で外に出て、コンクリートブロックで作られた簡易的な通路の上を歩き、プレハブの脇を通って目的の倉庫へたどり着く。倉庫のすぐ目の前に一本の木が大きく育っていて、これがあるのもこの倉庫が目立たない原因だろう。
 鉄製のちょっと重たい扉を開き、ふたりが中に入る。
「電気はどこだったかな……?」
 扉を閉める前に、和弥が照明のスイッチの場所を探してすぐに見つける。入り口すぐ脇の天井近くにあったそれは、スイッチと言うよりも箱の中にひとつだけ入ったブレーカーだった。そのブレーカーを上げるとわずかにひとつだけある蛍光灯が点灯し、室内を薄暗く照らした。
 和弥が扉を閉める前にチラッと回りを確認したが、やっぱり周囲に人がいるようではなかった。
「こんなところ」
「へー……、やっぱり学校って、わたしの知らないところがいっぱいあるんですね……」
 学校っていうものは意外とそういう「ファンタジー」なものなんだろう。まぁ、そういう所があるから、生徒の間で根も葉もない怪談話が出来上がったりするのかもしれない。
 理科室の隣に、普通の鍵に加えて南京錠で2重に鍵をしてある小さな部屋があるのだが、生徒の間で有名な噂として「理科室の隣の開かずの部屋は、入ったら出てこれなくなる」なんてのがある。あの部屋は、実験で使う薬品が保管してある薬品庫で、薬品管理の徹底上、入口の鍵を2重にしてあるだけなのだ。まぁ、そのうちバラそうと和弥は思っているが。
 そんなファンタジーな空間のひとつである倉庫の扉にカギをかけて、改めて部屋の中を見渡す。6畳ほどの部屋に、体操で使う古そうなマットが数枚。跳び箱競技で使う、大きな安全マットがひとつ。そして、陸上競技で使うハードルが壊れかけの物を含めて幾らか。ほかにも、カラーコーンや段ボール箱に昔使っていたであろうバトンや旗、ボロになって破れたりパンクしたサッカーボールやバレーボールなど、いろんなものが置いてあった。
 そういえば、ここにあるマットは、確か去年、器械体操部を受け持っている荒木先生が「新しいマットを買ってもらったから、このマットは校庭で使うのに使っていい」と言っていた覚えがある。でも、現在校庭で使っているマットもまだ使えるから、当分はこのままなんだろう。古いとは言っても、まだまだ使えそう。
「せーんせ」
「ん、どしたー?」
 倉庫の隅の、比較的きれいな棚の上に美穂が荷物を置くと、小さなからだがうれしそうに和弥にきゅっと抱きついてくる。和弥もそれに答えて、きゅっと抱きしめ返す。
「こうするの、久しぶりです……」
「うん、そうだね……。先月の初めくらいぶりかな?」
 心地良さそうな顔をして、美穂が和弥の身体をギューっと抱きしめる。和弥も美穂の頭をそっと撫でてあげながら、やさしく抱きしめ返す。しばらく忙しかったから、寂しい思いをさせちゃったかなと思い、その分愛情を込めてぎゅっとする。
「う、……せんせ」
「あ、ごめん。苦しかった?」
 ちょっと強くしすぎたかなとか思い、腕の力を緩める。でも、美穂は和弥の顔を満面の笑顔で見つめると、もう一度ぎゅっと抱きついてきた。ちょっとだけ苦しかったけど、でもその分愛情が伝わってきてうれしかったのだ。
「なんだか、安心します。せんせいと、こうしてると」
「うん、そうだな……」
 禁断の恋をしているから、ふたりとも気を使うことが多い。だからこそ、こうやってふたりっきりになれる時が大切なのだ。ここだって、そんなに安心できるところではないのだけれど、普段が「教師と生徒」なだけに恋人同士になれる空間は貴重だ。
「せんせ……」
 美穂が和弥の顔を見つめて、そっと目を閉じる。和弥もそっと唇を重ね合わせて、お互いの気持ちを繋ぎ合わせる。つながっていた唇が離れても、美穂が和弥を放すまいと意識せずにきゅっと引き寄せ、何度と無くキスを繰り返す。そうしているうちに、ふたりとも興奮し、息が少し上がってくる。
「美穂……」
 和弥がもう一度短いキスをすると、何枚か重ねて高くなっているマットの上に美穂を腰掛けさせる。ちょうど高さの低いベッドのようであり、ふたりともなんとなくドキドキしてくる。
「ホントにいいの?」
「はい……。いいですよ」
 ちょっと恥ずかしそうに、美穂が微笑む。
「わたしも、せんせいとえっちしたかったんですから……」
「うん、ありがとう……」
 再び唇が重なり合って、何度も何度もキスをする。心が暖かくなって、頭の中がボーっとしてくる気がする。
「美穂……」
 和弥が美穂の目をやさしく見つめながらつぶやく。美穂も、その目と言葉に、こくんとうなずく。
 ふたりの唇がつながると、どちらが先とでもなく小さく口が開き、お互いの舌が少しずつ絡み合う。
「んっ……」
 美穂が小さく声を上げ、小さな口を和弥にふさがれてしまう。その中では、小さな舌が何かつながりを求めるかのように動き、絡み合う。息継ぎをするかのように口が少し離れても、まだ物足りないかのようにふたりは、お互いの唾液を交換するかのようにチュパチュパと小さな音を立てながら舌を絡め続ける。
 しばらく絡み合っていたふたりの唇が離れると、その間に銀色の筋がつーっと糸を引いて、ぷつんと切れる。
「ぷはぁ……」
 少しだけ苦しかったかのように、美穂が息を吐く。だけど気持ちは、今の雰囲気を楽しんでいるかのように、これからのことを期待するかのように、ドキドキと鼓動し、顔は紅潮して小さな身体も火照っている。
「……美穂、……触るよ?」
 和弥の申し出に、美穂も無言のままうなずく。体操服の上着の裾から手を入れ、そっと美穂のわき腹を触る。すべすべですごくさわり心地のいい美穂の素肌。
「くふふ……」
 そこを触られ、美穂が少しくすぐったそうに声を上げる。
「くすぐったかった?」
「はい、……ちょっとだけ」
「はは、ごめんな」
 和弥が美穂のほっぺたにちゅっとキスをして、ごめんねの気持ちを伝える。
 もう一度裾から手を入れて、美穂の胸に手をかける。そこは素肌ではなく、胸を覆うようにブラが付けられていた。
「美穂、付けるようになったんだね」
「はい。……ちょっとずつですけど、おっきくなってるんで」
 最初の頃と比べると、けっこう成長している美穂の胸。まだ本格的なブラを付けるほどではないけれど、成長をはじめてる胸のためには大切なことだろう。だから、和弥もやさしくしてあげなければならない。
「脱がしても大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ」
 美穂をばんざいさせて、体操服の上着を脱がす。美穂の胸に付けられている、一番最初につけるタイプの白いファーストブラ。小さいけれど成長してきた胸を、やさしく守るようなタイプ。こういう部分でも、和弥は美穂が成長をしていることを実感する。
 和弥が美穂を横から抱きしめるようにしながら、そのブラの上に手をそっと覆い被せる。ふたりが目を合わせて、くすっと笑顔になる。美穂が「触っても大丈夫ですよ」という笑顔を見せるながらうなずくと、和弥もブラの上から指でさするように触る。
「んっ……」
 まだ成長過程でも、感度はすごくいい美穂。身体に、びくびくっとした快感が走る。
「痛いとか、ない?」
「あふっ、……だ、大丈夫ですよ」
 和弥が指でさするように触ってくれるのが気持ちよくて、思わず身じろぎをするようにしてしまう。
「直接触っても、大丈夫ですから……」
 快感を感じながら、美穂が言う。「いいの?」という和弥の顔に、こくんとうなずく。
 美穂の胸からファーストブラを取り去ると、かわいらしく成長を続けて膨らみも目立ってきた胸があらわになる。強く触ってしまうと壊れてしまいそうなほど、かわいらしくデリケートな胸。
 美穂に寄り添ってキスをしてから、マットの上にころんと寝かせる。頬を染めてうれしそうな、恥ずかしそうな表情をしながら横たわる、かわいい女の子。夏の間に付いた水着の日焼け跡もほとんど消えて、白くてきれいな素肌を纏っている。
 いろんな欲望や衝動が襲って来そうになりつつも、和弥は自分の心を落ち着けるようにゆっくりと息をひとつ、ふたつと吐き、その小さな胸のてっぺんにちゅっと口付けをする。
「あふ……」
 美穂の身体がぴくんと動く。和弥も美穂の反応を見ながら、ピンク色をしたてっぺんを舌でやさしく舐める。
「ふぁ、あ、あっ……」
 自然と甘美な声が漏れ、それをあまり大きな声にしてはならないと、美穂が手で軽く口をふさぐようにする。声と同調するように、美穂の身体もぴくん、ぴくんと小さく動く。
 片方の手では、何か安心感を求めるかのように和弥の手を掴む。和弥にはその美穂の手の力で、いまどれだけの快感が襲っているか、どんなに気持ちいいかがわかる。いわば、一種のバロメーターのように機能する。
 這いずり回る舌が、胸から腋のほうへと移動する。それとともに、美穂から発せられる声も少し変わる。くすぐったいような、でもすごく気持ち良いような、なんともいえない快感が美穂には伝わる。
「ひゃ、あ、あっ……」
 手で押さえてるはずの口から、抑えきれない声が出てしまう。それをまた抑えようとしている美穂が、すごくかわいい。
 まだ毛の色も薄い美穂の腋は、ちょっとだけしょっぱい味もした。今日の練習で汗を書いたせいか、素肌もなんとなくベタつきがあるような気もするが、そんなことは気にせずに和弥は美穂へ愛撫を続ける。
 首筋をぺろっと舐めて、耳とほっぺたにキスをする。口をふさいでいる手をどけて、唇にもちゅっとキス。
「せんせ……」
 唇が離れて見つめ合うふたり。ちょっと切なそうな顔で、美穂が期待も混じった声で和弥を呼ぶ。
「うん、……下も触るよ?」
 愛しい女の子の求めに、和弥も応える。
 美穂の右手を和弥の左手で握ったまま、余った右手を美穂の脚の付け根へと伸ばす。まだ下には体操服の紺色のハーフパンツが着けられており、和弥がその上から美穂にそっと触れる。
 すこしガサガサした手触りのハーフパンツの上から、美穂の大切なところをやさしく触る。それがなんとなく優しい感触で美穂には伝わるらしく、快感というよりも心地いいという感じで、少しうっとりとした表情で美穂が見つめる。
 そこから手を動かして美穂の細い太ももに触れる。すべすべで少しの柔らかさもあり、和弥にとってすごく触り心地がいい。美穂には、それがなんだか優しい感触で伝わる。和弥にされると不思議と落ち着き、少しの気持ちよさと一緒に、なんだかうっとりとしてくる。
「せんせ、脱がしてもいいですよ」
「うん……」
 美穂の言葉に応えて、和弥がハーフパンツに手をかけてするするっと脱がす。細い脚から抜き取ってしまうと、腰へ着けられている白いパンツが現れる。だけど、その大切な部分はなんだか濡れているようだった。
 それを確かめるかのように、和弥がその部分に触れる。
「んっ……」
 さすがにこの状態で触れられると大切なところに刺激がくるらしく、美穂から微かな声が上がる。その部分の布は、しっとりと濡れており、その中ではすでに秘部が口を開いて液を流していることが感じられた。
 和弥の指がゴムをくぐってその中へ進入する。すべすべの美穂の素肌を通り少し盛り上がったところを抜けると、そこにはすでに液で濡れてしまった秘部があった。下のほうまで指を伸ばすと、流れ出た液がおしりのほうまで濡らしているのが感じられた。
 和弥との経験のおかげか、美穂もすごく感度が良くなっているようだ。身体はまだまだ子供のようでも、心は少しずつ大人に成長しているのだ。学校の授業だけじゃ教えられないことを、恋人の美穂にだけ特別に教えてるのかもしれないなと和弥は思う。
「美穂、全部取るよ」
 美穂がうなずいたのを確認してパンツを脱がすと、マットの上には靴下だけを履いた小さな身体の女の子が横たわる。顔は紅潮して少し息を切らし、火照った身体は裸でもぜんぜん寒くないくらい。和弥もたまらなくなって、Tシャツを脱いで美穂をぎゅっと抱きしめる。
「あ、……せんせい」
 何度しても飽きないくらいキスをしながら、美穂の身体をぎゅっと抱きしめる。女の子らしくやわらかい身体が和弥の身体にも伝わり、すごく興奮する。
 唇を離し、和弥が美穂を抱き寄せながら、右手で秘部に触れる。
「ひゃあ……、あっ……」
 小さな芽をそっと触り、美穂に気持ちよくなって欲しいと想いを込めながらやさしく動かす。そのたびに、美穂の口からは甘美な声が小さく上がる。
 とろとろと流れ出ていた液も和弥の指のおかげで量を増し、その一部がマットの上にも流れ落ちる。その流れ出る液を指ですくい、芽に塗りつける。
「んはぁ! あんっ!」
 和弥が指を動かすたびに、くちゅくちゅっ、という音と美穂のかわいい声が上がる。美穂と和弥の繋いでいる手にも力が加わり、ものすごい快感を感じていることを伝える。
 美穂の身体の動きも、びくんびくんと大きなものになり、甘美な声もさっきまでとは少し違った、より一層気持ちいいことを伝えるようなものになる。
「はぁん、はぁっ……、あんん!」
 美穂の芽を動かしていた指が下へと移動し、秘部の中へと進入すると、ひときわ大きな声が上がる。美穂がその声を抑えよう抑えようとしても、どうしても漏れ出てしまう。
「あぁっ、……あっ」
 中は液で充満していて、和弥の指がぬるぬるとした感触に包まれる。小さな美穂の身体には、和弥の指が入っただけでも大きな快感となって身体中に押し寄せる。
「あっ、せんせ……、あんっ!」
 ゆっくりと指を出し入れし、美穂の反応をうかがう。何度も和弥と経験を重ねているが、美穂の秘部はまだ小さくきれいなままで、それでも和弥の指を液でぐっしょりと濡らしていく。
 指をゆっくりと出し入れするだけで、小さな空間の中にぐちゅぐちゅと音が響いてふたりの耳に入る。自分たちが、いかにいやらしいことをしているかがわかり、それが一層燃える要因にもなる。
 指を出し入れするスピードを早くすると、そのスピードにあわせるように美穂の上げる甘美な声も大きく、早くなる。自分の発した声と自分の秘部から発せられる音が聞こえて、同じだけ大好きな先生にも聞こえているのだろうと思うと、なんだかものすごく恥ずかしくなってしまう。
「はぁっ、せ、せんせ……」
 息が切れそうな美穂が、とろんとした表情で、和弥に動きを止めるように求める。このままでは、今すぐにでもいってしまいそうだったのだ。この状態でいってしまったらすごく気持ちいいだろうけど、正気に戻るまでどれくらい間が空くかわからない。それくらい気持ちがいい。
 でも、自分だけ気持ちよくなるより、大好きな人にも気持ちよくなって欲しいのだ。そして、それは出来るなら一緒に。
「来て……、来てください……」
 和弥が動かしていた手を自分の手で押さえ、和弥自身を求める。
「うん、わかった」
 美穂に快感を与えることに夢中になっていた和弥だが、それだけ自分の頭も甘美な空気に酔いしれていたのだろう。クラクラしそうな雰囲気の中、ジャージとトランクスを脱ぐと、大きくなったモノをあらわにする。
「……あ、……ゴムがないよ」
 こんなところで、大切なことに気がつく。ゴムは買ってあるのだが、それ自体は職員室の自分のロッカーに入っているカバンの中だ。和弥が持ち歩いてないのだから、さすがに美穂も持っていないし、第一、そんなものを美穂に渡したこともない。
「そのままでも、いいですよ……」
 はぁはぁと息を切らしながら、美穂が言う。
「……でも、……大丈夫?」
「はい。わたし、一応まだだから、……たぶん大丈夫です」
 微笑を浮かべながら言う美穂。クラスにも初潮を迎えている生徒が増えてきているようだが、美穂は成長が始まったような段階だから、まだなのだ。
「……わかった。でも、出すときは外で出すからね?」
 美穂がこくんとうなずき、和弥も決心する。前まではまったく付けないままで、中で出していたことだってあるのだが、夏休みに自分の家でして以来はきちんとゴムをつけるようになった。もう美穂も年頃だし、いつ生理が来てもおかしくない頃ではある。
 外出しでも、ゴムをつけなかったら避妊にはならないのだが、今のこの状況で「入れない」というのも酷い話だろう。
「入れるよ」
 美穂の表情を確認すると、大きくなったモノをびしょびしょになった秘部にあてがい、ゆっくりと挿入していく。大きな抵抗があるわけではないが、ずずずっ、と美穂の小さく柔らかい中にまるで包み込まれていくように入っていく。
「あ、あぁぁ……、あっ……」
 美穂から声が上がり、和弥の手を掴む力もきゅっと強くなる。決して痛いわけではなく、入ってくるだけであまりの気持ちよさにどこかへ飛んでしまいそうなのだ。
「入ったよ、大丈夫?」
「は、はい……、大丈夫です……。き、気持ちいいです……!」
 和弥のモノが入っているだけで、美穂には快感の波が押し寄せている。中は別の生き物でも居るようにうごめいて、ぎゅむぎゅむとモノを締め付けている。
「うん……。美穂、先生も……、すごく気持ちいい」
 あまりの締め付けに、今すぐにでもいってしまいそうなほど気持ちいい。何度か経験しているうちに、美穂も和弥に会うように「成長」してしまったのかもしれない。
 だけど、今日の状況ですぐにいくわけには行かない。何も付けずに中に入れているのだから、最後までそこは理性を保っておかなければならない。
「……もしものときは、ちゃんと責任取るから……」
 和弥がそうつぶやくと、美穂をぎゅっと抱きしめる。
「あぁふ……、せんせ……」
 美穂もそれがすごくうれしく、快感の波に酔いしれながら和弥を抱きしめ返す。抱きしめたおかげでふたりがつながっているところが余計に締め付けられ、さらに快感が襲う。
 久しぶりのふたりにはこれだけでも気持ちいいのだが、もっと快感を求めようと、ふたりがゆっくりと動き始める。
「う、……はっ」
「ひゃ……、あぁんっ……」
 ゆっくりと腰を動かし、美穂の中をかき回す。満たされた液体がふたりが触れ合っている部分のごくごくわずかな隙間を通り、つながっている部分で外へと溢れ出す。
 それがやがて音を出すほどになり、ふたりの耳にも入ってくる。
「あっ、……あぁぁっ」
 声を抑えよう抑えようとするのに、自然と出てしまう美穂。今のこの状態がすごく気持ちよくて、幸せで、暖かくて。だから、より一層気持ちよく感じてしまうのだ。
 ぐちゅぐちゅ、という粘り気を帯びた水の音がふたりのいる空間に響く。その音の発生源では、ふたりがつながっている部分がゆっくりと動いて出入りし、美穂から出された液が和弥の身体へと付着して、和弥自身をも濡らしてしまう。
「ひゃっ、あぁっぁっ、あふっ」
「はっ、あっ、……くっ」
 あまりの気持ちよさに、美穂も和弥も一緒に声を上げる。それが、ふたりの動きとそれに伴って上がる水の音とともに、一定のリズムで響く。
「せ、せんせ、……きもち、気持ちいいです。気持ちいいですよぉっ……」
 今にもどこかへ飛んで行ってしまいそうなほどの快感に耐えようと、美穂が和弥の身体にしがみつく。
「うん、……先生も、きもち、……気持ちいいよ」
 和弥も息が切れてきて、快感に耐えるのも限界になってきた。しがみついている美穂を抱きしめ、さらにスピードを早くする。
「ひゃぁぁ、あっ、あっ、あっあぁぁっ」
 じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、と水の音が大きくなり、美穂自身の締め付けもきつくなってくる。
「だ、ダメです……。せんせぇ! い、いっちゃいそうです」
「う、……うん。先生も、……先生もいきそう」
 結合部から飛び散った液体がふたりとその下のマットを濡らし、水で濡れたような跡もうっすらと広がっていく。
 絶頂を迎える前の一番気持ちいい僅かな時間を、ふたりがひとつにつながった身体と気持ちで共有する。
「だ、ダメです。だめ、いっちゃう」
「あっ、先生も、んんっ」
 美穂がもうだめ、という苦悶の表情にも似た顔をし、最後のときを迎える。和弥も最後の理性を残しながら、美穂を絶頂へ導く。
「ひゃぁぁっ、あっ、……ひゃぁぁあ」
 美穂の身体がぎゅぅぅっと縮こまるように動き、それと同調するように美穂の中に入った和弥のモノもぎゅぅぅっと締め上げる。
「はぁっ、あっ!」
 和弥も快感に飲み込まれてしまいそうな中で、理性がどこかへ飛んでいってしまいそうなところで腰を引き抜く。その瞬間、和弥のモノの先端から、白い欲望が大量に勢い良く吐き出されていく。
「あっ、あっ……」
 なんとなく情けない声を出しつつも、和弥は果てていく。絶頂を迎えてぷるぷると震えている美穂の身体に、和弥の欲望が大量に撒き散らされていた。
「……っ、あっ……。はぁっ……」
 美穂の身体の脈動が、ゆっくりと収まっていく。荒い息をしながら、お互いに絶頂の余韻に浸っている。
「……美穂、……大丈夫?」
「……は、……はい。……大丈夫です」
 今にも倒れてしまいそうなほど、頭がくらくらしている和弥。美穂の上に覆いかぶさるように両手を付いて、大切な人の顔を見つめる。
「……せんせい」
「うん、……美穂」
 ふたりの唇がつながって、しばらくの間、何度も何度もキスをする。ヒートアップしたふたりが、心の中だけは暖めたままで身体をクールダウンする。
「すごく、気持ちよかったです……。せんせい、大好きです」
「うん。先生も、気持ちよかったよ。……大好きだよ、美穂」
 愛の言葉を交わしながら、何度も何度もキスをする。大好きな人とキスをするのは、なんでこんなに幸せで暖かい気持ちになるのだろうと美穂は思う。だから、何回だってキスをしたくなる。
「……えへへ、せんせ」
 唇同士が離れて、美穂がにこっと笑う。その笑顔に、和弥も笑顔で返す。
「……しかし、……ごめんな。身体、かなり汚しちゃって」
「え? ……あはは、いっぱい出てますね……」
 和弥の言葉に、美穂も初めて気がつく。ふたりがつながっていたところを中心に、和弥の出したものが飛び散っているのだ。それは、おそらく最初のほうに出したであろうものが、美穂の顔のすぐ横のマットにまで飛んでいた。そこまでの間にも、いくらかの白い液体が点々と跡をつけている。
「でも、うれしいです……。せんせいが、いっぱい気持ちよくなってくれて」
「はは、そっか……。ありがとな」
 なんとなく恥ずかしそうに、和弥が言う。思い起こせば、1ヶ月以上美穂を抱いていなかったこともあるが、ここの所忙しくしていたので、自分ですることもしていなかったのだ。
「身体拭いてあげるな。そのままにしていいよ」
「はい。わかりました」
 和弥が、履いていたジャージのズボンのポケットに入っているポケットティッシュを出して、美穂の身体に飛び散ったものを拭いていく。特に、美穂のおへその辺りには大量の精液がべっとりとかかっていて、とてもティッシュ一枚で足りるほどではなかった。
 美穂が上半身だけ身を起こして、和弥が身体を拭いてくれるのを見守る。だけど、なんだかそれがうれしくて、微笑ましくなる。
「……ん? どした?」
 ニコニコとした顔の美穂に、和弥も気がつく。
「いぇ、……なんでもないです」
 和弥に微笑みで返して、幸せな気持ちを満喫する。
 ふたりとも後始末を終えて、裸のまま和弥が美穂を後ろ抱きにして、ちょっとだけおしゃべり。
「寒くない?」
「いえ、大丈夫ですよ。……あったかいです」
 和弥に完全に身を預けて、美穂がうっとりとした表情になる。
「大好きです、先生」
「うん、大好きだよ、美穂」
 今日何度したかわからないくらいのキスをして、和弥が美穂をぎゅっと抱きしめる。
「あんまり遅くならないようにしないとな」
「はい……。でも、もうちょっとこうして居たいです」
「うん、いいよ」
 小さな空間の中で、ふたりがもうちょっとだけ、幸せなひと時をすごした。秋のちょっとした放課後のひと時。



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