・スタディ
・第5話 もうひとつの初めて



 冬が過ぎ去って、春がやってくる。そろそろ暖かい日和になる日も増えてきて、もうすぐ本格的な春到来という頃。学校は6年生が卒業して、ほんの少しの間だけ1学年分の人数が少ない日々を過ごす。
「……最初に言いましたように、本日は修了式です。朝のホームルームが終わったあとに、各クラスは体育館へ集合してください」
 朝の職員室。この学校に勤める教師が全員集合し、職員朝礼の時間。今日は1年の締めくくり、修了式。これで1学年が修了し、来年度の春からはみんな進級をするのだ。
「明日から春休みに入りますので、各担任の先生方は生徒の指導をしっかりとお願いします。それでは、職員朝礼を終わります」
 職員室の一番前に立った教頭先生が朝礼を締め、職員室は再び賑やかになる。
「こうしてみると、1年も早かったなぁ……」
 教室へ持って行く書類をまとめながら、和弥がぽそっとつぶやく。
「そうでしょ? 社会人になると、あっという間に歳とっちゃいますよ」
 隣の坂本先生が笑いながら言う。約1年前に和弥がこの学校に着任して、あっという間に1年経ってしまった。思い返せば、いろいろなことがあった1年間だったなぁと思う。
「来年の1年もまた早いんでしょうね」
「あっという間ですよ。籠原先生も、うかうかしているとあっという間にオジサンになっちゃいますよ」
 そう言われて、和弥が苦笑する。
「でも、籠原先生のスーツ姿も1年間続きましたからね。いつまでも若い籠原先生でいてくれないと困りますよ」
「あははは。努力します」
 和弥が1年間貫き通した、スーツ姿。教師の中では一番若い和弥だが、割とそのスタイルが評価されて、生徒だけでなく女性教師の中でも人気が出ていたりする。そのせいか、今までラフな格好で来ていた先生の一部にも、スーツに変えた人がいるくらいだ。
 さくらのつぼみが膨らんできて、そろそろ春本番。今日で学校の1年間が終わる修了式。明日から春休みに入って、学校もしばらくの間お休みになる。その間に、和弥たち教師は来年度への編成をやったりする。今までの間も、成績表をつけたりいろいろな書類をまとめたりして忙しい日々が続いていた。
「最近、一緒に居ることが少ないんだよなぁ……」
 職員室から自分のクラスへ移動する間、和弥がそんなことをつぶやく。あれ以来、秘密の関係を持ってしまった和弥と美穂。この年の差とこの環境ではなかなか厳しい部分はあるが、時間があったときにふたりで秘密のことをしていたりするのだ。しかし、ここ最近はいろいろと忙しい事もありあんまり触れ合っていない。
(あんまりおおっぴらにすると、バレてまずい事になるしな……)
 そこのところはふたりともしっかりとわかっていて、普段は出来る限り他の生徒と同じように、普通に接するようにしている。けれど、それが妙なぎこちなさを生むことも感じていて、そこら辺のバランスが難しい。
(けど、今日くらい放課後に美穂と時間作りたいな……)
 そう思いながら校舎の階段を上がって、自分のクラスの教室に入る。まだ、朝のホームルームの始まりを告げるチャイムは鳴っていないが、もう生徒は揃っていてみんな話をしたりしていた。
「おっはよー」
「おはよーございまーす」
 和弥が朝の挨拶を言うと、みんなから大きな声で帰ってくる。その声がいつもよりも大きいから、明日から春休みということのうれしさが伝わってくるような気がした。
「……」
 教室に入ると、いつも自然と美穂の姿を探してしまう。大抵はいつも同じような場所で友達と話をしていたりするので、割と簡単にその姿を見ることが出来る。
「……」
 その美穂も朝のホームルームの前、いつも和弥が入ってくると自然とその顔を見てしまう。そして、いつも自然と目が合う。和弥は割と普通の顔をしているが、美穂はにこっと微笑んで返す。みんなの前だとさすがにべたべたするわけに行かないから、こうやってさりげなく、目線で通じ合っているのだ。
(今日くらいは、先生と一緒に居たいなぁ……)
 美穂も心の中でそう思う。これから春休みに入って、大好きな先生と顔を合わすことが出来なくなってしまう。だから、今日くらいは一緒に過ごしたいと美穂も思っていた。
「……美穂ちゃん、……美穂ちゃん」
「……え? あ、な、なに?」
 さっきまで一緒に話をしていたあずさから声をかけられ、美穂が我に返る。
「どうしたの? ぼーっとして」
「えっ? そ、そうかな?」
 あずさに指摘されて、美穂の顔が少し染まる。
 考え事をしていたのはほんの寸秒だったけれど、その間じっと和弥の顔を見つめていたのだ。その姿が、なにかほわーんとしていたのだろう。
「先生のほう見てたよ。美穂ちゃん、籠原先生に気があるんだもんねー」
 あずさと一緒に話をしていたあやが、すかさず突っ込んでくる。
「え……。そ、そんなことないよ。先生、……だもん」
 自分の心に反した言葉。けれど、今の先生との関係を保つためには、こう言うしかない。このことがみんなに知れ渡ったら、いったいどうなるのか。その事はきちんとわかっているけど、少しだけ心が痛む。
「そうかなー。美穂ちゃん怪しいよー」
 あやの厳しい突っ込み。そう言われると、美穂も困ってしまう。
「あやちゃん、あやちゃん。美穂ちゃん困ってる」
 厳しいあやの突っ込みをあずさが止める。あずさは美穂の気持ちは知っているけど、今その関係がどうなっているのかはまったく知らない。微妙に、気付いている部分はあるかもしれないが。
「うーん……」
 ちょっと不服そうなあやの顔に、あずさがくすりと笑う。けれど、これ以上聞くと今度は自分の秘密を追求されそうな気がして、あやも引き下がった。
「よっしゃ、ホームルーム始めるぞー」
 やがて朝のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴り響き、和弥の声で生徒がみんな席に着く。いつものホームルームを、いつもとは違った、ちょっと和やかな雰囲気で行い、クラス全員で揃って体育館へと向かう。
 修了式なんていつの時代も変わらないもので、小1時間ほどで転校する生徒や、転任する先生の紹介をしたり、校長の話、生徒指導の先生の話で終わってしまう。校長の話も生徒指導の話も、自分の頃とちっとも変わらないなぁと思いながら、和弥は聞いていた。
 だいたい、和弥のクラスには転校する生徒はいないし、来年もそのまま一緒に進級して、同じクラスを受け持つことが一応内定している。2年に1度のクラス替えなので基本的にクラスも担任もそのまま進級するのが基本。だから、和弥も落ち着いているのだ
「先生。来年の担任って決まってるんですか?」
 修了式を終えて体育館からの退場を待つ間、先頭にいる男子生徒がそんなことを聞いてくる。
「んー、まだ決まってないけどな。まぁ、6年生になってからのお楽しみだ」
 とりあえずそう言ってはぐらかす。あくまで「内定」であって「決定」ではないから、新年度の編成が決まるまでに変わる事だってあるかもしれないのだ。
(まぁ、来年も美穂とほとんど一緒に顔を合わせることが出来るからな……)
 教室へ帰るまでの間、美穂くらいにはこっそりと伝えておこうかな、何てことも思った。
「あの、せんせい……」
「ん、竹浦。どうした?」
 その美穂に、教室の前の廊下で呼び止められる。こういうとき、ふとあの日のことを思い出すのだが、今の美穂はそう慌てている様でもなく、なんとなく落ち着いている。
「今日、何か……。用事ってありますか……?」
 その言葉を聞いて、和弥はほんの少しの間考える。たまに生徒が、放課後に何か手伝う事はないかと聞いてくることがある。その時は、教材を準備するのを手伝ってもらったり、印刷室へ紙を運んでもらったりする。美穂もよく聞いてきて、手伝ってくれるのだが……。
「……そうだな。……じゃあ、いつものちょっとだけ、な」
「……はい、わかりました」
 にこっと笑いながら答え、美穂も教室へと入った。これも、あの出来事以来のパターン。普通は具体的に何をするから手伝って、と言うのだが、こういう曖昧な言い方をする時はもちろん秘密のことをする約束になってしまった。ただし、これも他の生徒にバレてしまわないように、気をつけなければいけない。
(先生と一緒に過ごすのって、久しぶりかも……)
 美穂も和弥と一緒に居たいから、自分から誘うことも多かったりする。まだまだ恥ずかしい部分はあるけど、そういうことをするのは割とまんざらではない。
(まぁ今日は、先生たちも早く帰るだろうしな……)
 和弥もそう考えながら、教室へと入った。


 帰りのホームルームを終えて、5年生のカリキュラム全てを終える。教室もきれいに片付き、来年進級してくる新しい5年生のための教室になる。生徒も次第に帰っていき、和弥も適当なところで教室から出る。
「さ、これで1年間の担任も無事に終わったなぁ……」
 廊下を歩きながら、うーんと伸びをする。いろんな事があった1年だけど、その役割を果たすことが出来た。数多い教職員の中でも自分のスタイルを貫き通し、認められることが出来たし、なによりもクラスの生徒をみんな育てることが出来た。それがなにより、大きな自信になった。
「来年は今の子達の進学もあるからな……。がんばらないと……」
 職員室へ戻って、一息つく。こういう日の教職員というのも、なにか落ち着いた感じの空気が流れていて、みんな割とのんびりとしているように見える。さっさと帰り支度を始めている先生もいるくらいだ。
「……そろそろ、か?」
 時計を見ながらある程度机の上を片付けて、いつものようにカギを持ち出す。そして、何気なく職員室を出ていつもの場所へと向かった。あんまりこそこそすると余計に目立つから、逆に落ち着いて、堂々と行動していたりするのだ。
「さすがにまだ、来てないよな……」
 先に倉庫の中へ入って、美穂がやってくるのを待つ。美穂と秘密のことをするのは、ほとんどこの場所になってしまっている。以前も書いたが、放課後には生徒の来ない旧校舎の一番端っこという場所だし、先生の中でも知っている人が割と少ない。都合のいい場所なのだ。
「……普通、こんないい場所って無いよな……」
 そうつぶやきながら、話が作ってくれる環境というものに感謝する。
 コンコン!
 軽いノックの音が部屋に響く。和弥がそっと扉を開けると、いつものように美穂がうれしそうな顔をして立っていた。
「ん、入って」
 そっと扉を閉めて、内側からカギをかける。手提げカバンひとつを持って、軽装の美穂。着ている服も今日は暖かいので、割と春らしい格好をしている。
「三倉とかに、なんか言われなかった?」
「いえ、大丈夫です……。最近は、用事があるって言うとあんまり深く聞いてこないですから……」
 あやもあずさも仲の良い友達で、割と一緒に帰ることが多かったらしいが、こうやって秘密のことをするのに何か勘ぐられるとちょっとまずい。特にあやはそういう噂ごとが好きそうなので、美穂もけっこう気をつけているのだ。
 とはいえ、あずさはちょっと感付いている部分もあるようで、気を使って深い詮索をしないらしい。この仲良し3人組の中では、あずさが一番大人じゃないのかな、と和弥は思っている。
「5年生も終わっちゃったな」
「はい。……先生が担任のクラスで、よかったです」
 美穂がそう言いながら、にこっと笑う。美穂にそんなことを言ってもらえると、なんだかすごくうれしい。
「でも、……来年は先生変わっちゃうんですか?」
 美穂も、やっぱり気になっていること。というよりも、クラスの中では美穂が一番気になっているんじゃないかと思う。
「んー……。他のみんなには秘密にしといて欲しいんだけどな……」
「はい……」
「来年も、たぶん先生が担任だからな」
「わぁ……、そうなんですか。……うれしいです」
 美穂の満面の笑みを見て、和弥もなんだかうれしくなる。
「いや、まだ決まったわけじゃないけど……。一応、そういう話で進んでるからさ」
「わかりました」
 美穂がうれしそうな表情で、こくんとうなずく。ちっちゃいそのからだのせいで、上目遣いに見てくるその表情がものすごくかわいい。思わず、和弥も抱きしめたくなってしまう。
「まぁ、4月の始業式。楽しみにしててな」
 頭を優しく撫でながら、そっと美穂のからだを抱き寄せる。美穂も和弥に抱き寄せられて、少しうっとりとした表情になる。あの時からほとんど変わっていない、美穂の小さなからだ。かわいくて、愛しくて、たまらなくなってくる。
「相変わらずちっちゃいな……。美穂は……」
 からだを和弥に預けて、目を閉じたまま心地良さそうにする美穂。和弥だってそんなに大きなからだをしているわけではないが、そのからだにすっぽりと包まれるくらいの小さな美穂。
 両手で優しく包んだまま、少し腰をかがめて目線を下ろすと、美穂も背伸びをしてくる。そして、そっと唇を寄せる。
「ん……」
 小さな声が、和弥の耳に届く。美穂の小さな唇をふさぎ、美穂を抱き寄せる力が自然と強くなる。美穂も、その小さな唇で和弥の唇を塞ぎ、和弥のからだを力いっぱい抱きしめた。
「……ふふ」
「……えへへ」
 しばらく繋がっていた唇が離れると、ふたりが目を開け、互いに微笑みあう。
「美穂……」
「……はい」
 おでこ同士をこつんと合わせて、和弥が優しく言う。
「……えっち、……していいか?」
 その問に、美穂もこくんとうなずく。顔を少し赤くして、ちょっと恥ずかしそうにうつむく。それは嫌なんじゃなくて、興味はあるけどまだまだ恥ずかしい、微妙な乙女心の表れ。
「ありがと、な。美穂……」
 和弥はそういうと、もう一度、美穂へとキスをした。
 ほとんどの生徒が帰り、先生たちも帰りかけている学校。シーンとした、静かな校舎の中の一室。閉められたカーテンから透き通ってくる光だけで、少し薄暗い部屋の中。外からは、校庭で遊んでいる子供たちの声が微かに聞こえてくる。
「んっ……。ぷは、あんむっ……」
 スチール机の上に座って、互いの唇を重ね合わせる。ふたりの舌がゆっくりと絡み合い、その音が部屋の中へと響く。
「はぁ、……せ、……せんせい」
 閉じていた瞳をそっと開き、紅潮した顔の美穂。そんな顔で、上目遣いで見られると、和弥もものすごくドキッとしてしまう。
「……もっと、もっとしてください」
「あ、……あぁ。美穂……」
 再びふたりの唇が重なり合い、互いの唾液を混ぜ合わせる。和弥の舌が美穂の舌と絡み合い、そのみだらな音がふたりの頭の中へも響いて行く。
「んっ……。んふぅ……」
 大好きな人とキスを続け、それだけでどんどん興奮してくる。
「ふう……、んっ……」
 唇から、ほっぺた、おでこ、首筋にもいっぱいキスを浴びせられ、からだが熱くなる。ここのところ暖かい日が続いて、今日もすごく暖かな日だけれど、美穂と和弥のからだはそれ以上に、汗をかきそうなくらい熱くなっていた。
 和弥もスチール机の上に座り、美穂をひざの上に乗せて後ろ抱きにする。和弥のからだに、美穂の小さなからだがすっぽりと包み込まれる。
「あ、……せんせい」
 そうされて、美穂がなんだかうっとりとした表情を見せる。後ろを振り返った美穂に、和弥がさらにキスをする。
「はむっ……、んんっ……」
 後ろ抱きで和弥にしっかりと抱かれたままキスをされて、からだがもっともっと熱くなってくる。和弥の両手が、まだ膨らみのない美穂の胸の上へ動き、服の上からやさしくマッサージをする。
「ひゃ……、あ……」
 成長の遅い美穂なので、まだ胸の膨らみらしさがぜんぜん感じられない。暖かい日和で、冬の頃からすればかなり薄着になった美穂だが、その薄手の服の上からでも、膨らみはあまり感じられなかった。
(まだ、子供なんだよなぁ……)
 そんなことを考えながら、優しく優しく、美穂にキスを続ける。
「は、あ……」
 顔が紅潮し、息も荒くなってきた美穂。その姿を見て、和弥は美穂の服に手をかける。
「ボタン、外すよ……」
 美穂がこくりとうなずいたのを確認して、ほっぺたにちゅっとキスをする。一番上に着ている、薄いオレンジ色のシャツのボタンをひとつずつ外し、その下に着ているTシャツをあらわにする。そのTシャツの下は、もう素肌。
「……ずいぶん、薄着なんだな……」
「はい……。最近、暖かかったですから……」
 普段はスーツ姿の和弥なので、季節の装いなんかはほんの少ししか感じることが出来ない気がする。代わりに、美穂などの生徒の格好を見ていると、今日は暖かいとか寒いとかを、割とはっきり感じ取れるのだ。
 Tシャツの上から胸を優しく擦る。さっきと違って、素肌の感触をはっきりと感じ取れることが出来る。
「触るよ?」
「はい……」
 美穂の同意を得て、和弥の手がTシャツの裾から直接中へ進入していく。すべすべのおなかを通って、美穂の成長前のふくらみに、すぐにたどり着く。初めて触った時からちっとも変わっていない、まだこれから成長する胸のふくらみ。ほんのわずかにふっくらした感じはあるが、それでもまだまだ。
 けれど、なぜかそのかわいさに、和弥は興奮してしまう。こんな趣味はなかったはずなのに、それが美穂だと言うだけで、ものすごくドキドキしてしまう。
「あっ……、せんせい」
 和弥の指が、美穂の胸の先端に触れる。ふにふにとしてやわらかいその突起を、和弥の指がもてあそぶ。
「や、あ……」
「きもちいいの……か?」
「わ、わかんないです……」
 美穂はそういうが、頭の中にははっきりと、気持ちいいという情報が流れている。その証拠に、その小さな胸の先端もすぐに固くなり、ぷくっと起ち上がってきたのだから。
 人差し指でさきっぽをくりくりと動かし、そのなんとも言えない独特の感触を楽しむ。成人女性なんかじゃ絶対に味わえない、美穂独特の胸の感触。そしてそのまま、手のひらで胸全体を覆い隠すようにする。
「せ、せんせい……。や、ぁ……」
 まったくと言っていいほど膨らんでいない胸を、両手で優しく優しくマッサージする。美穂の胸が、早く成長しますようにと願いを込めながら。それでも、女の子らしく脂肪はきちんと付いているし、膨らんでいないとはいえ胸の膨らみの前兆のようなものはあるのだ。なによりも、和弥の手の動きに、美穂が感じてくれているのだ。
「あ……、はぁ……。……んっ」
 切なそうに吐息を吐くと、そのまま唇をふさがれる。桃色に染まったかわいい顔が、和弥のキスを一生懸命に受けている。完全に和弥を信頼して身を任せ、安心しきっているけど少し恥ずかしそうで、でもうれしそうな。そんな表情をしていた。
 キスをしながら、和弥の手がゆっくりと下へ降りていく。唇が離れて、和弥の手がデニムのスカートにかかっても、美穂はそれを拒否しなかった。
「……いい?」
 美穂がこくんとうなずいたのを確認して、デニムのスカートをするっと脱がす。すると、今日はいつもはいているハーフパンツではなく、すぐに薄いピンク色のパンツがあらわになった。
「……今日は、いつもと違うんだな……」
「えっと……、そ、その……」
 顔を真っ赤にして、何かを言おうとした美穂。その姿がまたかわいくて、ほっぺたにちゅっとキスをする。やっぱり美穂も、今日は和弥を求めていたのだ。
「ありがとな、美穂」
「え、……は、はい……」
 和弥にきゅっと抱きしめられて、心の中が暖かくなってくる。まだまだ恥ずかしいのだけれど、やっぱり大好きな人がやさしく、暖かくしてくれるから、がんばろうという気がするのだ。
 おなかの辺りで美穂のからだを抱きしめていた和弥の右手が、するするっと美穂の脚の付け根へと降りていく。
「ひゃ……」
 ちょっとおしゃれをしたパンツを通り過ぎ、細い太ももの内側へと手が入り込む。すべすべで、ちょっとやわらかい、触っていてなんだか心地いい感触。
「やだ、せんせ……」
「いや?」
「そ、そうじゃないですけど……。ふぅん……」
 すべすべの太ももをやさしく触られて、美穂も息が少し強くなる。こんなことをされたことがないから、慣れない感覚のせいで素直に気持ちいいという情報に取れない。
「あ……」
 太ももを触っていた手が、美穂のパンツの生地に触れる。そして、そのまま生地に隠れている縦筋に沿ってつつーっとなぞる。
「ひゃぁぁ……」
 首をかしげるようなしぐさで、美穂が快感を受ける。和弥の手が何度か筋の上を往復すると、その度に切ない声が美穂から漏れる。そして、すべすべのお腹まで登った手が、素肌に沿って再び降りて生地をくぐり、美穂の大切な部分、まだ真っ白な場所へと入っていく。
「ふわぁ、あぁ」
 何度かしたけれど、まだまだ未成長の美穂の秘部。ほとんど閉じたままの秘部に指を添えてそっと割り開くと、小さな水音と共にねばねばとした液が流れ出てくる。
「せ、せんせぇ……。あっ……」
 その液を指先に付けて、小さな芽をゆっくりと触る。
「ふぁ、ひゃああん!」
 びくんと美穂のからだが動き、思わず大きな声が出る。同時に、からだの中をゾクゾクという感覚が襲ってくる。けれども、今日は和弥のために我慢したい。そう思って、その感覚に一生懸命耐える。
「美穂、気持ちいい?」
「は、はい。……ちょ、ちょっと怖いですけど、き、きもちいいです……」
 美穂にやさしいキスをしてあげながら、和弥は行為を続ける。小さくて壊れそうな芽を、やさしくやさしく、ゆっくりと。
「ふぅわぁ……、あっ! あんっ!」
 普段おとなしい美穂が、こうやって快感に身悶えている。そのギャップが、和弥の心を燃えさせてしまう気がするのだ。
「はぁん、せ、せんせい。……なんだか、わたし、……怖いです」
 どんどん増大していくゾクゾクという感覚に耐えられなくなってきて、和弥の左腕にしがみついてくる。このゾクゾク感がもっともっと増して、頂点まで達してしまうと自分がどうにかなってしまいそう。そんな感覚が、美穂に恐怖心を与えてしまっているのだ。
「美穂、どうした? 怖いの?」
 一度美穂への行為を中断して、やさしく話しかける。
「そ、その……。きもちいいんですけど、なんだか、……気持ちいいのが怖いんです」
「そっか……。じゃあ、やめたほうがいいか?」
 和弥も気遣って、美穂をきゅっと抱きしめてあげながら言う。美穂の嫌がる事は絶対にしたくないし、こういうことはお互いに楽しむものだと考えているから、無理矢理なんてしたくないのだ。
「で、でも……。もっと、もっとしてほしいんですけど……」
 ちょっと困ってしまっている美穂。そんな美穂の頭をやさしく撫でてあげながら、和弥がふと、ひとつのことに気が付く。
「……な、美穂。……美穂って、今までいったことってある?」
「え、……いったこと、ですか……?」
 そう聞かれて、美穂が余計に困った顔をする。
「そ、その、……本とかではよく見るんですけど。……どんなのか、わからないんです……」
 やっぱり、と和弥が思う。美穂はまだエクスタシーを感じたことがないから、恐怖心があるんだろうと。
「たぶん、美穂が怖いのって、その『いっちゃう』っていうものに通じてるんだよ」
「え、……そうなんですか?」
「たぶん、だけど……。イクって、いちばん気持ちいい瞬間だから、美穂もそれを経験して欲しいって思うんだけど……」
 やさしい顔で言われて、美穂もちょっと考える。やっぱりあの感覚は怖いけれど、いちばん気持ちいいっていうのも経験したい。それに、そうしてくれるのは大好きな先生だから……。
「せんせい、……やさしく、してくださいね……」
「あぁ。……だけど、どうしても怖かったら言ってな」
 美穂がこくりとうなずくと、再び愛撫を再開する。やさしいキスをしてあげながら、美穂の履いているパンツを脚から抜き取り、下半身をあらわにしてしまう。そして、もう一度、秘部から流れ出ている液を指ですくい取り、それを芽にやさしく塗りつける。
「あんっ!」
 ぴくんとからだが脈動し、荒い息が出始める。美穂に過剰な刺激を与えないように、ゆっくりゆっくりと。
「あ、ひゃ、あぁ!」
 ゾクゾクという感覚が美穂のからだを襲い、からだが勝手に動き出してしまう。和弥の手で秘部をいじられるたびに、からだが同じようなタイミングで、ぴくりぴくりと動いてしまう。
「はぁぁん、せ、せんせぇ……」
「大丈夫だよ、ここに居るから。安心して」
 左手で美穂の手をやさしく握ってあげる。ときどき、ほっぺたや唇にキスをしてあげながら、美穂の恐怖心が少しでも和らぐようにする。
「ひゃっ、あっ、あっ……、あんっ」
 からだがぴくん、ぴくんと動くたび、声も同じように出てしまう。それは、和弥の手で美穂のからだを動かされているから。大好きな人にからだを意のままに操られている、そんな不思議な感覚に感じてしまう。
「ふぁ……、あ、ひっ……」
 声だってわざと出しているつもりはないのに、なぜか自然と出てしまう。おそらく美穂はその素質があるのだろうけど、その声を聞いていると、自分がとてつもなくえっちな性格をしているような、そんな風に感じる。
「あっ……、な、なんだか、せ、せんせい」
 いつもなら絶対にやめているくらいの感覚を、からだ中に響かせている美穂。和弥が握っていた手をぎゅっと握り返し、声も少しずつ変わっていく。からだも、自然と微かに震えてくる。
「ひっ、あっ、あっ……」
 心の中に余裕がなくなってくる。次々と打ち寄せてくる快感の波に飲み込まれてしまいそうで、それに溺れまいと我慢する気持ちと、溺れたあとにどんなことが待っているんだろうと期待する気持ちが、葛藤を始める。
「だ、だめ、せんせぇ。だめ……」
 額にも汗をかき、和弥のからだのなかで身悶える。秘部で動いている和弥の手を太ももでぎゅっとはさんで、次々に襲い掛かる快感に必死で耐える。
「美穂、もうすぐだよ」
 声のトーンも変わり、秘部から出てくる液の量も格段に増えていく。美穂の初めてのエクスタシーも、近づいてきた。我慢する気持ちが、和弥の優しい言葉と自らの期待に薄れていき、全身が快感の波に飲まれていく。
「ひゃぁ、あっ、あっ……。だ、だめ、せんせぇ!」
 和弥の手を握る力がこれ以上になく強くなり、からだがぶるぶると震えて、美穂の声がさらに大きくなる。和弥の指がここぞとばかりにうごめき、美穂へ最後の刺激を与える。
「ひっ、あぁぅんっ!」
 一瞬、びくんとからだがえびぞったかのような動きを見せた後、ふつっと美穂の動きが止まる。
「……」
 和弥の手をぎゅぅっと握り締め、口を開けたまま声にもならない声を上げる。
「……っ、あ、……あぁ」
 しばらくすると、和弥の手を握っていた力もゆっくりと弱くなり、荒い息をしながら、からだを完全に和弥に預けるように倒れこんだ。
「はぁ……、はぁ……。せ、……せんせい」
 少しうつろな目で、美穂が和弥の顔を見つめる。初めてのエクスタシーを感じ、なんとも言えない悦楽の表情を浮かべる美穂。それに吸い込まれるように、和弥もやさしく頭を撫でてあげながら唇をかぶせると、美穂のからだがぴくんと動いた。
「……はぁ、はふぅ……」
 まだ荒い息をしている美穂の頭を左手で撫でてあげながら、ほっぺたにキスをする。首筋の髪を指ではらうと、敏感になっているのか、その度にからだがぴくん、ぴくんとわずかに動いた。
「かわいかったよ、美穂」
「せ、せんせい……。ほんとう、……ですか」
「うん、すごくかわいかった……」
 ポーっとしている美穂を、やさしく抱きしめてあげる。まだ余韻が残っているのか、美穂もからだを動かそうとせず、和弥に身を預けっぱなしだった。
「……いまのが、……イクって、言うんですか?」
「うん、そうだよ……。……どうだった?」
「なんだか、……ゾクゾクするのがいっぱいになって、ダメって思ったら、頭の中真っ白になっちゃったんです……」
「そうなんだ。……気持ちよかった?」
 和弥がそういうと、美穂は頬を染めたままこくんとうなずいた。なんだかそれがすごく愛しくて、美穂のからだをきゅっと抱きしめてあげながら、しばらく頭を撫で続けていた。
「……せんせい。……その、……今度はせんせいと一緒にしたいです……」
 ちょっと経ってから、美穂がそう言う。
「ん、大丈夫か? せんせいは、美穂が気持ちよくなってくれればそれだけでもうれしいよ」
「ううん、そ、その。……やっぱり、……わたし、先生にも気持ちよくなって欲しいんです……」
 うつむきながら言う美穂。その顔は、これ以上にないくらい真っ赤だった。
「……そっか。……じゃあ、美穂」
 美穂の赤い顔にちゅっとキスをして、いったん美穂をひざの上から下ろす。そして、和弥も自分のズボンとトランクスを脱いで、大きくなったままのモノをあらわにする。
「……や、やっぱり、……大きいんですね」
「う、うん……。でも、……そんなに見られると先生もやっぱり恥ずかしいな」
 美穂も今まで数回見てきたけれど、見るたびにちょっとビックリしてしまう。けれど、その美穂にじっと見られていると、和弥もどきどきしてくる。
「……美穂、おいで」
 スチール机の上に座ったまま、Tシャツだけの美穂が和弥の上にまたがって、今度は向かい合わせになる。そして、そのままゆっくりと腰を下ろさせる。モノに手を添えて、まだ小さな美穂の秘部にあてがう。
「いいよ。そのまま、ゆっくり腰下ろして」
「は、はい……」
 美穂が言われたままに腰を下ろすと、少しの抵抗とともにずぶずぶとモノが美穂の中に飲み込まれていく。初めてのエクスタシーで、秘部がしっかりと濡れていたおかげで、割とすんなりと入った。
「あ、あ、あっ……。あふぅっ……」
 半分より少し飲み込んだところで、モノの先端が奥にこつんと当たる。その状態で少しだけ腰をずらしてあげて、なるべく美穂に負担がかからないようにしながら美穂のからだを抱える。
「痛くない? 大丈夫?」
「は、はい。……大丈夫です」
 だいぶ痛みもなくなってきて、和弥が中で動く気持ちよさもわかってきた。小さな秘部が和弥のモノを締め付けて、和弥にも快感を与えている。
「じゃあ、ちょとずつ動くよ」
「はい……」
 美穂のからだを抱えたまま、あんまり激しくしないように、少しずつ腰を動かす。
「あっ、ひゃっ……」
 繋がった部分が擦れて、美穂へ快感が通じる。吐息が漏れはじめ、その声が和弥を興奮させていく。
 美穂が和弥のひざの上に乗った状態なので僅かなストロークしかないのだが、それが美穂へ過大な負担を与えず、逆に快感を大きく与えていた。
「んっ……、ふわっ……」
 ゆっくりと、僅かなストロークで動かし続けると、小さな水音とともに美穂から微かな声が漏れる。美穂も、何度か和弥と繋がっていくうちに、その快感というものを感じれるようになってきたのだ。
「……美穂、気持ちいいか?」
「は、はい。き、気持ちいいです……」
 真っ赤な顔をして、和弥の与える快感を素直に感じ取ってくれる女の子。その姿に、和弥の心もきゅんっとなってしまう。背中に回した手で美穂のからだをそっと引き寄せて、そのかわいい顔にキスをする。
「んっ……、んっ……」
 美穂も負けじと、自分から和弥の唇に吸い付く。一度イったおかげで、頭の中がえっちなことに対して積極的になっているのだ。
「んふぅっ……、んっ……」
 キスをしながら動かし続けると、唇を通じて美穂の吐息が和弥へと通じてくる。
「せ、せんせぇ、……あっ、い、……き、気持ちいいです」
「あ、あぁ。先生も、気持ちいいよ……。美穂とこうしてると、なんだか、すごく、……幸せだぞ」
 目の前で自分と繋がっている、愛する女の子。真っ赤な顔をして、初々しい声を上げながら、恥ずかしそうだけれど、でも幸せそうな、そんな表情をしてくれる女の子。和弥の心が暖かくなり、なんだかきゅんっと締め付けられるような、そんな不思議な気持ちになる。
 それが、おそらく愛なんだろう。そう感じながら、美穂のからだをぎゅっと抱きしめる。
「あぁぅっ……」
 小さな背中に手を回してきゅっと抱きしめると、美穂も小さくて細い腕を和弥の背中に回し、きゅっと抱きしめてくる。
「み、美穂……。好きだ、……大好きだ。……愛してるぞ」
「せ、せんせぇ……」
 美穂の腕の力がぎゅぅっと強くなり、和弥を締め付ける力がより強くなる。おそらく、美穂が無意識に力を入れたのだろう。そっと目を瞑ったまま、和弥のからだに抱きついて小さな声で言う。
「わ、わたしも、……わたしもせんせいのこと、大好きです」
 その言葉が、和弥の心の中にふんわりと響いていく。自然と美穂を抱く力が強くなり、ふたりが高ぶっていく。
「せ、せんせぇ……。わ、わたし、また……」
 和弥に抱きついたまま、美穂のからだがふるふると震え始める。そのからだを、さっきよりもやさしく、ぎゅっと抱き寄せる。
「こ、怖いか……? 先生、ここに居るからな」
「ち、違うんです……。わ、わたし、……気持ちよくて、……あぅっ」
 美穂のからだを、再びゾクゾクするほどの快感が走っていく。和弥の動き一つ一つが快感に感じられ、美穂のからだへと大きく響いていく。
「せ、せんせぇ。……わ、わたし、わたしっ……」
「う、うん。……美穂。先生も……」
 和弥の動きと美穂のゾクゾク感が自然と同調する。おそらく、美穂も和弥も気が付いていないのだろうが、美穂は自然と腰を動かすような動きをしていた。それは、美穂が意識的にしたのではなく、おそらく自然と、美穂が初めて感じたエクスタシーをもう一度得たいという気持ちが、その動きをさせたのだろう。
 結合部の水音が大きくなり、美穂も切なく、かわいらしい声を上げる。和弥の極限まで大きくなったモノが美穂の中を小さくこすり上げ、それが互いに快感となって響いていく。
「ま、また、へんに……。へんになっちゃう……」
「い、いいよ、美穂……。先生、ここに居るから。……一緒に、一緒に」
 美穂が和弥の首に回した腕の力が強くなり、和弥の体をこれ以上にないくらいの力で抱きしめる。和弥も美穂を強く抱きしめて、美穂の愛をいっぱいに受け取る。
「せ、せんせ……。せんせい!」
「……うん、美穂。……美穂」
「あっ、ふわぁぁ! ……あぁーっ!」
 美穂が声を上げ、和弥に抱かれたままからだを大きく反らす。それと同じく、美穂の中に入ったままの和弥のモノをぎゅぅっと締め上げる。
「うわっぁ……。み、美穂っ……」
 それに耐え切れず、和弥も美穂をしっかりと抱いたまま、美穂の中へと果てた。
「……あ、……あぁっ」
 大きく背中を反らせたままだった美穂から、ゆっくりと力が抜けていく。和弥は美穂の中に入ったまま、そのからだをやさしく抱きとめた。目を閉じたまま、はぁはぁと息を切らし、和弥の体へと崩れるように寄りかかる。放心状態の美穂を、和弥はやさしく抱く。
「せんせ……い」
 いった余韻が残ったままの美穂が、弱い力で再び和弥の体を抱きしめる。
「……美穂」
「わたし、……幸せです」
 小さな声で、ささやくように言う美穂。それを聞いて、和弥も心の中がすごく暖かくなる。
「先生も、幸せだよ……」
「……せんせい」
 ふたりが見つめあい、自然と唇が重なる。唇同士が繋がるだけのキスだけれど、それがすごく幸せいっぱいのキス。互いに抱きしめあい、からだだけでなく、心の中まで一緒になっていくような。そんな、ちょっと不思議な、幸せな感覚。
「気持ちよかった?」
 頭を撫でてあげながらそんなことを聞くと、美穂が恥ずかしそうに、こくんとうなずく。
「せんせいが、……気持ちよくしてくれたんですよ……」
 はにかみながら、そう言う。和弥もすごくうれしくなって、ほっぺたにキスをする。
「先生も、美穂が気持ちよくしてくれたんだよ。ありがとな、美穂」
「えへへ……。よかったです……」
 照れくさそうに笑ったその顔が、すごくかわいい。我慢できなくなって、もう1回ほっぺたにキスをする。
「……へへ」
 ふたりとももうしばらく、こうやって甘い時間を過ごしていた。



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