・スタディ!
・第3話 近づいていく気持ち



 放課後の学校。普段は賑やかな声が響いている校舎も、ほとんどの生徒は帰りシーンとしている。時々、何か用事があって残っている生徒が廊下歩く音がするけれど、それすらもすぐに聞こえなくなってしまう。
「えぇと……、次はこれか……」
 ひとり教室に残って、今度使う教材の準備をしている和弥。机の上に広げられたいろいろな資料をまとめながら、教材を作っていく。周りがシーンとしているので、割と集中してできる。
「……」
 机に向かって黙々と作業を続ける和弥。職員室だと電話の音が鳴ったり、他の先生がいたりしてちょっと騒々しいし、なにより教室だと場所が広く使えるので教材を作るときは大抵教室でやっているのだ。
「……ん」
 ふと、遠くの方から、吹奏楽部が練習している音が聞こえてくる。隣の校舎、音楽室の方だ。
「……あぁ、秋の大会ももうすぐだもんな」
 その音に気が付くと、和弥は少し手を休めた。
 高学年の生徒が、1週間に一度やっているクラブ活動とはまた別に、任意で入るクラブ活動がいくつかある。そのひとつである吹奏楽部が今年は例年になくすごいらしく、音楽担当の先生も力が入ってるらしい。
「そういや、こないだ坂本先生、ものすごく楽しそうな顔してたもんなぁ」
 和弥のクラスの副担任をしている音楽の坂本先生。職員室では机が和弥の隣で、日ごろからいろいろとお世話になっている。
「ふぅ……」
 机から立ち上がって、体を少し動かす。帰りのホームルームを終えてから1時間半。ずーっと教室に残って教材の準備をしていたから、体が少し疲れている。窓のそばで体を軽く動かしながら、校庭を見下ろす。校舎の3階からだと、校庭がほとんど見渡せる。トラックでは陸上部が走り込みをしているようで、20人弱くらいの生徒が走っているのが見えた。
「……この時期は走りやすいかな?」
 そんなことをボソリとつぶやく。10月に入って秋も深まり、かなり過ごしやすくなってきた。半袖のシャツだったのが長袖に代わり、上着も着るようになった。いまだにスーツをきちんと来ている和弥。その姿も、5年生の担任の中では名物になりつつある。
「んー……。ちょっと休むか」
 再び机に向かったものの、まだ教材の準備は終わりそうに無い。学校の先生というもの、いろいろな教科を一手に引き受け無ければならないので、けっこう大変なのである。それでも、この忙しさが逆に楽しさにもつながっているのだが。
「……」
 なんとなく机の引き出しを開ける。いろいろと物が入っているが、中は適度に整理されている。
「……ん?」
 ふと、写真のミニアルバムがひとつ入っているのに気が付く。それを取り出し中を見ると、8月の臨海学校のときのものだった。
「あぁ、まだ持って帰ってなかったんだな」
 学校の公式とも言える、写真屋さんが写してくれたものとはまた別の、クラスの中だけで写したもの。副担任の坂本先生と折半して、フィルム代や現像代を出し、このアルバムをクラスの生徒に回覧して、欲しい写真があったら焼き増しして配った。他のクラスもやっているらしく、焼き増し代も全部坂本先生と折半した。学校の公式のものは自分たちで代金を払わなきゃいけないから、これは先生たちで持つのだ。
「もうあれから2ヶ月も経つんだよなー……」
 アルバムをめくりながら、あの時は楽しかったなーと思い出す。教師として初めて参加するものだったし、普段見れない生徒の顔をたくさん見ることが出来た。それに、いろんなふれあいも出来た。
 そのふれあいという点で、ひとつのことを思い出す。ずっと前から気になり続けている、ひとりの生徒。美穂のこと。
「……はぁ」
 ため息をひとつつく。美穂に対する思いって、自分の中ではどうなってるんだろうかと考える。和弥自身、いまだに妙な違和感を持ったまま学校生活を送っている。
「どうなんだろう、なぁ……」
 アルバムをぺらぺらとめくり、ひとつの写真が目に入る。海岸で写した、和弥と美穂のツーショット写真。二人ともピースをして楽しそうに笑っているが、美穂の方は普段では見れないくらいの満面の笑みで、それでもちょっと頬が染まったような感じで写っている。
「……おかしいよなぁ、やっぱり」
 なぜだかわからないけど、その写真を見ているとドキドキしてくる。和弥自身、それはきっと恋なんだろうと、頭の中では気がつき始めている。
「……まさかとは、……思ってたけど」
 そう思った瞬間さらに大きな、ドキン、という不思議な気持ち。
「……おかしい、……絶対におかしい」
 これは恋なのか? なんていうセリフを心の中で自分に投げかけてみる。今まで感じてきた、妙な感覚、不思議な気持ち、今までの自分自身の恋愛経験……。
「生徒に恋するなんて、……絶対無いって、……思ってたけど……」
 自分の風貌のせいか、それとも性格のせいか、今まで恋というものは総じて受ける方だったと思う。人生の中でも、こんなにドキッとしたことなんて、あんまりないと思う。だから余計に、生徒に恋するなんて、という気持ちが大きかった。
 けれど、もう一人の冷静な自分に指摘されれば、きっと認めてしまうと思う。美穂に恋しているということを。
「でも、それは禁断だよなぁ……」
 生徒と教師という立場。それに、互いにそこそこ歳も離れている。だいたい、美穂の方が自分をどう思ってくれているのかわからない。
「はは、……まいったなぁ」
 和弥は自嘲気味に笑ったが、それでもたった今、自覚してしまった。自分自身の気持ちというものを。
「竹浦のこと、……美穂って、呼ぶようになれるか……?」
 ボソッとそんなことをつぶやく。それは無理だろうな、と心の中で思った。
 アルバムを閉じ、それを引き出しではなく自分のカバンの中へしまう。いつまでも教室の机の中に置きっぱなしにしとくのもなんだから、きちんと持って帰ろうと思ったのだ。
「ふぅ……」
 ため息をひとつついて、椅子にもたれかかる。ぎしっと椅子がきしむ音が、教室の中に響いた。
 再び、粛清が流れる。遠くから、小さく足音が聞こえてくる。ペタペタという、あんまり大きくない音。たぶん、生徒の足音なんだろうなーと、和弥は上の空で考える。普段の校舎の中ならまったく聞こえないような足音でも、こんなに静かになると意外と聞こえるんだよなぁと感じた。
 その足音が、和弥のいる教室へとゆっくりと近づく。後ろの入り口の扉が開いていて、そこから廊下が見える。和弥は上体を起こして、その足音の主がどんな生徒だろうと思い、目線を向ける。
「あ……」
「あ……。せんせい……」
 足音の主が教室に入ってきて、和弥と目線があう。その瞬間、互いに小さく声を上げ、そして、互いをドキンという不思議な気持ちが襲う。
(竹浦……。なんでこんな時間まで居るんだ)
 内心、少し焦る和弥。しかし、黙って驚いているわけにはいかない。
「……お、どうした? こんな時間まで」
 焦っていてもさすがは大人。一応平静を装って美穂に声をかけたが、それでも内心はドキドキした気持ちが強かった。ついさっきまで、あんなことを考えていたのだ。だから余計に、ドキドキとしていた。それに、まさか美穂が残っているなんて思っていなかった。
「あ、……委員会の活動があったんです。それが長引いちゃって」
 頬を少し染めて答える美穂。美穂自身も、まさか教室に和弥がいるとは思ってなかったのだから、びっくりして余計にドキドキしてしまう。
「そうか……。美化委員会だったよな……」
「そうです。いま、ゴミ集積場の整理をやってるんで……」
 高学年の全体的な取り組みでもあるのだが、学校内のゴミを集める集積場が散らかりやすいので、高学年が率先して整理しようということをやっているのだ。それを、美化委員がトップに立ってやっている。美穂もけっこう積極的にやっているらしく、委員会の担当の先生からいろいろと話を聞いている。
「前に比べて、だいぶきれいになったよな」
「はい。こないだ、校長先生からもほめられましたし……」
「そっか、立派立派」
 自分の前まで来た美穂の頭を、ぽむっと撫でる。するとより一層、美穂の顔が赤く染まった。
(……やっぱり変だ)
 美穂の顔を見て、和弥のドキドキも大きくなる。そして、もうひとつ「もしかして」なんていう感覚が出てくる。
(まさかとはおもうけど、竹浦もオレのこと……。いや、そんなことは)
 自分の思いと、美穂の思いは違うだろう。和弥はそう思い包めて、心の中を無理やりまとめた。
「あ、あの、……せんせい」
「……ん? あぁ、どうかしたか?」
 ほんの一瞬だけ、別の考えをしていた和弥は、美穂の声にもとへ戻される。
「せんせいは、何やってたんですか?」
 頬を染めたままの美穂が、和弥の机の上に広げられているものを見て、聞いてくる。
「ん、今度使う教材の準備をな。だいぶ、出来上がったんだけど」
「あの、……手伝いましょうか?」
 少し控えめに聞く美穂。せっかく教室にふたりっきり。大好きな先生とできるだけ長い間一緒に居たいと、美穂はそう思った。
「うん、ありがとう。でも、ほとんど出来上がってるからな」
 教材の方を見て、和弥が答える。
「それに、だいぶ時間も遅くなってるから、暗くならないうちに帰えらないとな」
「……そうですか」
「あぁ。あんまり竹浦を遅くまで残してたら悪いからな。今日は委員会があったんだし」
 そう言われて、美穂が少しさびしそうな顔をする。
「気持ちだけもらっておくよ。ありがとな、竹浦」
 そして、また頭をぽむっと撫でられる。
「また今度、何かあったら頼むからな」
「はい、わかりました」
 やさしく言われて、美穂も笑顔を取り戻す。その笑顔が、和弥にとってはよりいっそう大きなドキンと与えた。
「じゃあ、せんせいも遅くならないように帰ってくださいね」
「あぁ、わかってるよ。また明日な」
「はい、さようなら」
 ランドセルを背負い、ぺこりとお辞儀をすると、美穂は帰っていった。
「……ふぅ」
 ため息をひとつ。
「……。さ、今日中に終わらせるかな」
 ほんの寸秒、頭の中で考え事をした和弥は、教材作りを再開した。


 住宅街の中の、少し古びたマンション。ここに美穂の家がある。ランドセルから鍵を取り出すと、誰もいない自宅の扉を開ける。
「ただいま……」
 シーンとしている家の中。父親は単身赴任で、2年くらい前から東北の方へ行っている。母親も仕事をしていて、いわゆるキャリアウーマンらしく、いつも帰ってくるのが遅いのだ。
「……」
 自分の部屋のなかで、ぽつんとたたずむ美穂。学校にいるときはすごく楽しいけれど、家に帰ってくるとちょっと寂しくなってしまう。自分が小さい頃は父親もこっちで仕事をしていたし、母親も仕事をやらずに子育てをしていたから寂しくはなかったが、小学校に入った頃から母親も仕事を再開し、そのころからずーっと「鍵っ子」なのだ。
「……洗濯物、入れないと」
 一息ついてからベランダへと出て、朝に母親が干していた洗濯物を取り込む。これもいつもの日課。ほかにも、ご飯を炊いたり、お風呂を掃除したりと、美穂にはいろいろやることがある。けれど、やっぱり美穂にとっては寂しい。
 昔から割とおっとりとした娘だった美穂だが、幼稚園の頃はそんなにおとなしい、という印象はあまりなかったらしい。むしろ、親が共働きになった頃から、次第におとなしい感じになってきた。
「……はぁ」
 ものの30分もしないうちに洗濯物を全てきれいに畳み、美穂がため息をひとつつく。自分のものだけを持って再び部屋に戻り、衣類をすべてしまうと、ベッドの上に腰掛ける。日も傾いてきて、部屋の窓からは少しだけ赤みがかった空が見える。
「……」
 ちらりと時計に目をやる。夕方とはいえ、まだ母親が帰ってくるまで時間はあるし、お風呂を沸かすのにも早すぎる。ご飯は、昨日の残りを使うと今朝母親が言っていたから、炊く必要はない。
 ころんと、美穂がベッドに横になる。今日は宿題も出ていないし、勉強ももうちょっと、夜になってからやりたい。何もすることがない、気だるい時間。
「はぁ……」
 しばらく横になっていた後、再びベッドから起き上がる。少し薄暗くなってきた部屋で壁に寄りかかって、美穂がたたずむ。ひとりっこの、寂しい時間。こんな時、兄弟か姉妹がいたらなぁと思うと、余計に寂しくなる。無意識のうちに、そばにおいてあったクッションを抱きしめる。
「……」
 恋人がいたら、……好きな人がこの場にいたらどうなるんだろう。きっとものすごく楽しくて、寂しくなんか全然ないんじゃないかなと思う。ふと、そんな考えが浮かんでから、ひとりの男の顔が目に入る。
「……籠原先生。……」
 ベッドの脇に置いてある写真立て。そこに入っている、夏の臨海学校のときの写真。海岸で写した、先生とのツーショット写真。美穂の、お気に入りの一枚。大好きな先生と、初めてツーショットで写った写真だから。美穂は知らないが、その写真は、和弥が教室で見ていた写真と同じもの。
「……せんせい」
 美穂の胸が、ドキドキとしてくる。先生と、恋人同士になりたい。優しくて、かっこよくて、しっかりしていて。ものすごく、憧れる存在。
「せんせいと両思いになれたら……」
 小さな思い。進級したとき、少しずつ芽生えていった恋心。こんな時、先生と一緒にいられたらすごく楽しいのだろう。さっきだって、本当は遅くなってもいいから一緒に居たかった。早く帰っても、家には誰もいないのだから……。
「……お付き合いするようになったら、……やっぱり、デートとかして、……キスとか、するんだよね」
 そんなことを考えると、顔が少し赤くなっていく。
「せんせいと……」
 まだファーストキスは迎えていない。女の子だから、やっぱり憧れというものはある。大好きな人と、少しロマンチックにファーストキスをしたい。ベタなようだけど、美穂にとってはそれが憧れ。そして、もうひとつ……。
「それに、……やっぱり、……えっちなことも、するのかな……」
 クッションを抱きしめる力が強くなる。そして、からだと心がその言葉に反応していることに気がつく。
 胸の高鳴りが、だんだんと大きくなり、からだも少しだけ熱くなってくる。クッションを抱きしめていた腕が、ゆっくりと脚の間へと降りていく。
「……せんせい」
 美穂がそうつぶやくと右手がスカートをくぐり、白いパンツの上からまだ未熟な秘部に触れる。じわっとした快感が、からだの中を流れる。
「んっ……」
 からだはまだまだ未熟でも、心は歳相応に成長している。そんな、微妙な年頃。きちんとそれなりの知識だってあるし、それなりのことも知っているのだ。
 成長途中の心とからだ。抑えきれない気持ち。悩み多き年頃の女の子……。
「……ふぁ」
 指先で、下着の上からつつっと筋をたどる。まっすぐの谷間の中に、少しだけぽこっと膨れた場所。その上を指が通った瞬間、美穂のからだがぴくんと動く。
「はぁん……」
 息を吐いたような、自然と出てしまう声。初々しい小さな声が、美穂の部屋の中に出されていく。
 右手をパンツの上でゆっくりと動かしながら、秘部を優しく触る。少し荒い息をしながら、その行為に没頭する。イケナイことをしているような感じはするけれど、この思いをどこへぶつけたらいいのかわからない。だから、この行為に入ってしまう。
「ふぅん、……せ、……せんせい」
 大好きな人。和弥のことが、頭の中へ広がっていく。ドキドキと高鳴る胸。広がっていく快感。それ以上のことを求めたくて、美穂は手をパンツの中へと入れていく。
「ひゃぁ……」
 ぴったりと閉じてはいるものの、秘部の谷の中はしっとりと濡れている。指をゆっくりと、やさしく動かしながら、直接からだへ快感を与え続ける。
「あぁん!」
 少し膨らんだ芽に指先が軽く当たった瞬間、美穂が思わず声を上げる。心はそれなりに成長していても、そこを直接慰めるには、まだ美穂には刺激がきつすぎる。一瞬だけ流れた電流のような快感に、思わず手を引っ込める。
「はぁ、……はぁ」
 少し息をついてから、その行為を再開する。やさしく、ゆっくりと、自分の大切な部分を傷つけないように。
「んんっ……、んぅぅ……」
 もっと興奮がほしくなり、余っていた左手が上着の中へと滑り込んでいく。裾から手を入れて、おなかをゆっくりと滑り、その場所へと到達する。指先で、自分のぺったんこの胸をやさしく触る。
「はぁぅ……、んぅ……」
 ぺったんことはいえ、年頃の女の子だからそれなりの膨らみの傾向はある。それでも、まだまだぺったんこの領域。早く大きくなってほしいと、前からずっと思っている。そうすれば、先生にももっと喜んでもらえるだろうと思って。
「はぁ……、はぁ……。せんせい……」
 小さな胸の先っぽのつぼみが、ぷくっと膨らんでくる。そのつぼみを、やさしくやさしくこねくり回す。
「ふぅぅん……、ふぅわ……」
 胸の快感は、なんというか、まだふわふわとした感じ。気持ちいいというよりか、心地いいような気がする。それでも、先っぽを自分で触りながら和弥のことを考えると、その左手が、大好きな先生のもののような気がしてくる。
「はぁん、……ふわぁ」
 絶えず両手を動かしながら、快感の中に身をゆだねていく。小さな胸を触ることの心地よさと、未熟な秘部からからだ中に広がるゆったりとした快感。気持ちも次第に高ぶっていき、やがて、快感の中にひとつの妙な感覚が生まれてくる。
「ふわ……、はぁぁん……」
 それに、美穂もすぐに気付く。両手を動かせば動かすほど、その妙な感覚は大きくなっていき、快感を飲み込んで膨らんでいく。
「……はぁん、ふわぁぁ」
 右手をパンツの中に入れたまま、手を動かし続ける。声もだんだんと大きくなり、さっきの妙な感覚がゾクゾクとした快感になる。今までと違う、刺激されるような快感がからだ中をめぐってくる。
「あ、……だ、だめ……」
 そのゾクっと言う感覚に美穂が耐えられず、声を上げて急に手を止めてしまう。
「はぁ……、はぁ……」
 両手をそれぞれの場所から離し、部屋の空気にさらす。しばらく素肌を触って暖かくなっていた両手には、部屋の空気は妙にひんやりと感じる。
「……なんだか、……やっぱり怖いよ」
 少し荒い息をしながら、美穂がつぶやく。あのままゾクゾクする快感に身を任せていたら、最後に自分が壊れそうな気がして怖いのだ。心が、気持ちが、自分のからだがどうにかなってしまいそうな、そんな恐怖感が美穂にはあった。
「あ……。やだ……」
 脚を開いてパンツを見せていたのが急に恥ずかしくなり、すぐにスカートで隠す。秘部の濡れが少し気になったけれど、まだパンツを取り替えるほどではなかった。
「……せんせい。……気付いて、くれるのかな……」
 満たされない気持ち。寂しい心。気付いてほしい思い。でもいつか、勇気を出そうと思う。
「せんせい……」
 日が暮れて暗くなった部屋で、美穂はつぶやいた。



小説のページへ