・Sweet Drops! Create K.G

Written by 後藤輝鋭

 自分が主人公のお話を自分が書くいうのも、ちょいとこっぱずかしいですけんど。


 暦の上では春。とはいいつつも、まだまだ寒い日が続く3月上旬。リビングのテレビでやっている天気予報が、まだしばらく寒い日が続くと宣言しながらも、今日と明日は少しだけ暖かくなるでしょう、などといっている平和な日。
「ふぁぁぁ、…ええ天気じゃのぉ…」
 いかにも「ついさっき起きたばっかりです」と行った風貌の輝鋭は、ベランダに立って大きなあくびをしながらうーんと伸びをする。寝癖がつきっぱなしの髪の毛をかきあげ、ふぅと息をついた。
 昨日までの寒さはどこへ行ったのやら。一転して暖かい天気となった、とある土曜日の午前。太陽がさんさんと輝き、まるでつかの間の春が来たような感じ。さっき流し聞きした天気予報でも、なんかそんな事いってたなー、なんて思い出す。
 ベランダの柵にほお杖をして、ボケーっと外を眺める。なんとなく、ちょっと幸せなひとときを感じて、気分も良くなってくる。ビューティフルサンデーでも歌いたくなるような気分だ。
「…今日は土曜日だっつーの」
 どうでもいい事に気が付き、ぼそりとつぶやく。サンデーは日曜日。土曜日だからサタデーだ。ということは、少年サンデーは日曜日発売なのか? などとくだらない考えが頭をよぎる。
「はぁ…。お日様がまぶしいな…」
 太陽をまぶしく感じて、輝鋭がおもわずつぶやく。そして突然、パジャマのポケットに手を突っ込んでちょっと大柄な態度を取り始める。
「おー、…お天道様が、まぶしいのぅ…」
 と、広島弁で言う。最近、こんなにまぶしいお日様の下へ出る事も少なかったから、気分的にはお勤めを終えてシャバに出てきたその手の人。誰もいない空にガンを飛ばし、太陽と青空が不思議そうな顔をする。
「…なにやってんだ、オレ…」
 周りで誰も見ていないことを確認して、自分のやった余りにもバカバカしい行動にひとりツッコミを入れ、勝手に苦笑する。
「…ふあ。…久しぶりに布団でも干そうか…」
 そう言って、輝鋭は猫背の体勢でのっそのっそと部屋へと入っていった。


 年末ってのはなにかと忙しいものだが、それに加えてシナリオとノベライズ作品の締め切りまで重なった上、あんな事まで起こったので、あんまり長くない人生でも最大級の忙しさを味わってしまったであろうあの日から、もう3ヶ月が経っていた。
 年が明けてから、新作も小説のほうも無事に発売された。しかし、それに関連する仕事が2月中旬まで続いた。そして、やっと出来た「ヒマ」なのだ。メイプルの事務所にも「連絡すんな! 電話かけても絶対に出んけえのぅ」とまで言ってあるせっかくのヒマなのだ。まぁ、実際かかって来たら出るだろうけど。
 こんなに天気がいいのだから有意義に過ごしたいけれど、なんか「ひま〜」とか言いながらダラダラするの方が気分良さそうな気もする。
「えっこらせ、っと…」
 ベッドのシートや掛け布団も一緒に持って来て、ベランダに干していく。布団を干すのなんて何ヶ月ぶりだろうか、なんて考える。少なくとも、年が明けてから干した覚えが無い。
「ふぅ…」
 布団を全部干して、改めて自分もお日様に当たる。あったかい太陽の光が、今だ寝起きの輝鋭の体を暖めていく。
「うみぃ〜…」
 妙な声を上げながら、自分も柵にのっそりと身を預ける。手を下にぶらーんとぶら下げて、全身の力を抜いてしまう。
「うにゃ」
 布団と一緒に自分も干されて、全身に日の光を浴びる。なんだか、すっごく気持ちがいい。ネコは暖かい日にこうやってひなたぼっこをしてるけど、ネコの気持ちがわかるくらいすごく気持ちいい。
「…なにしてるの?」
 ふと横から声をかけられ、輝鋭が振り向く。ちょっと不思議そうな顔をした結花が、そこに立っていた。
「日干し」
「…珍しいことするんだね、輝鋭クン」
 布団を日干しするのが珍しいのか、それとも「人間の自分が日干しされている」のが珍しいことなのか、ちょいとわからなかった輝鋭だが、とりあえず聞き流す。
「まぁ、ヒマじゃけえな」
 身を起こして、結花の頭をぽんっと撫でる。
「ほいで、今日はどうしたん?」
「えへへ、わたしもヒマだから、遊びに来たよ」
 結花がにこっと笑いながら言う。輝鋭がヒマでうれしい、というような笑顔だ。
「そうか。…パパとママは?」
「ついさっき、一緒に仕事に出かけちゃった」
「ふーん…」
 結花の両親は、自営業をやっているらしい。だから土日も家をあける事が多く、よって結花も輝鋭の家に遊びに来る。いや、遊びに来るというよりか、むしろ入り浸っている。
「パパもママも決算期で税理士さんの所に行ったりして、すごく忙しいみたいだよ」
「ふーん。そうか、決算期か」
 自営業という立場上、決算期は忙しかろう。忙しいからと言って店を休むわけにも行かないだろうし。
「それでね、明日の発注がたくさんあって、今日は帰ってこれないって言ってたから、今日は輝鋭クンのとこに泊っていいかな?」
「お、ええぞ。パパとママにはちゃんと言ったか?」
「うん。泊りに行ってもいいよ、って言ってたから」
「よし。ほんなら、今日は一緒に過ごそうなー」
 結花の頭を優しく撫でる。ベランダで太陽の光に照らされて、結花はうれしそうに微笑んだ。


 パジャマから部屋着に着替えた輝鋭が、午前中のティータイムを過ごそうと食器棚をあけて、いつものお茶を入れる道具一式を取り出す。そして、キッチンの棚をあける。
「結花、お茶なに飲みたい?」
「輝鋭クンの好きなものでいいよ」
「ほうか…」
 のんびりとした土曜日。別に気分転換をするわけでもないので、まぁ、いつも飲んでいる安いセイロンティーを選ぶ。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、水をケトルに入れてコンロの火にかける。
「沸くまでしばらくかかりそうだな…」
 輝鋭はそうつぶやきながらポットに紅茶の葉を入れ、いつも使ってる自分のブルーのマグカップと結花のために買ったちょっと小さ目のホワイトのマグカップを出しておく。以前、ふたりで街まで出たときに、輝鋭が結花に買ってあげたのだ。そう、今は、結花のマグカップが輝鋭の家にあるほどの仲なのだ。
 結花はこういう仲になる前から、輝鋭の家にしょっちゅう入り浸っていたけれど、今は入り浸る理由が以前と違う。前はうっとうしいような気がすることもあったけれど、今はそれが逆にうれしく感じれるのだ。一緒にいて、不思議と安心してしまう、そんな存在。
「ふふん…」
 テレビを見ている結花を見て、輝鋭が思わず鼻で笑う。生意気だけど、それがかわいげがあっていい。そんな結花とのんびり待とうと思って、リビングへと戻ろうとした時。ふと、ダイニングテーブルの上に置いてあるドロップの缶が目に入った。これも、結花が持ってきてくれたもの。
「結花、ドロップいるか?」
「うん!」
 結花の答えを聞いてからドロップ缶をひょいっと取って、フタを開けて逆さにする。普通なら、カラコロと音をたててドロップがひとつ落ちてくるのだが。
「ん?」
 カラン、とだけさみしい音をたてて、ドロップがひとつ落ちてきた。缶を振っても、もう音はしないし、なにより重さがない。一応確認のために中を覗いても、もう空っぽだった。
「ありゃ、1個しかなかった…」
 手の平に乗ったドロップを見て、ふと輝鋭に考えが浮かぶ。そして手に乗ったドロップを口に入れる。
「あー!」
 それを見て、結花が声を上げる。
「それ、最後?」
「うん、悪いな」
 そう輝鋭が言いながら、結花の目の前に座る。
「結花」
「…なに」
 ちょっと不服そうな結花の表情。輝鋭は口の中でドロップを転がしながら、結花の側まで寄る。
「目、つぶれ」
「…え?」
「いいけぇ」
「う、うん…」
 いきなりの展開にちょっと驚きの表情をした結花が、おとなしく目をつぶる。こういうちょっと素直なところが、なにかかわいらしさを感じる。
 輝鋭はそっと顔を引き寄せると、キスをする。
「んむ…っ」
 そのまま、輝鋭の口の中にあったドロップを、自分の唾液とともに結花の口へと入れる。結花は、ちょっと驚いたような仕草を見せるが、抵抗もせずにそのドロップを受け入れた。
「ん…、ぷはっ…」
 唇を離して、結花の顔を見る。頬を赤く染めて、恥ずかしそうにじっと目をつぶったまま。
「う〜…」
 そっと目を開けて、輝鋭をじっと見る。
 ぽかぽかぽかぽかぽか!
「おわっ!」
 結花が、両手で輝鋭をポカポカと叩く。叩くとは言っても、軽くだし、痛いわけでもない。
「もー、いきなり何するの!」
 口調では怒っているようにも感じるが、顔はすごく恥ずかしくて照れ隠ししているようだった。
「ははは、どうだった? びっくりしたじゃろうが」
「ビックリってものじゃないよぉ!」
 顔を真っ赤に染め上げて、結花が抗議する。真っ赤な顔した結花が、またかわいい。
「いきなり口移しなんてずるい!」
「結花だって、いつだかオレにいきなりキスしてきたじゃろ?」
「う、…それは、…そうだけど」
 途端に声が小さくなる結花。あの時のことを思い出すと、やっぱり恥ずかしいらしい。
「はは、いきなりで悪かったな。ごめんな」
 ぽむぽむっと、結花の頭を撫でる。
「でも、…ちょっとうれしかったかも」
「ん? よく聞こえんかったぞ?」
 輝鋭にはしっかりと聞こえているのだが、わざとらしく聞こえてなかったように言う。
「もぉ! 知らないっ!」
「ははは、ウソだウソ」
 輝鋭は結花の頭を撫でながら、きゅっとやさしく抱き寄せる。
「…もう」
 結花はそうつぶやいて、輝鋭の体に身を任せた。
 あの日の出来事以来、より一層仲の良くなったふたりは、ヒマを見つけては一緒に出かけたり、どこかへ遊びに行ったりして、そして体を重ね合わせている。見た目はまだまだ幼い結花も、その辺はどんどん成長していっている様だった。
「ねえ、輝鋭クン」
「なんや?」
「…えっち、…したいの?」
「はは、…オレは夜までお預けでいいけど…。…結花はしたいか?」
 ちょっといじわるな表情で輝鋭がいう。
「…わ、私は…。…夜までお預けでいいよ…」
 頬を染めて、ちょっと言い難そうに結花が言う。
「はははは。…そうだな。夜までお預けにしような」
 輝鋭が笑ってから、そっと結花の耳元へ近づく。
「…いっぱい、やさしくしたるけえな」
 ささやくように言って、ほっぺたへちゅっとキスをした。
「…う、…うん」
 染まっていた頬が再び真っ赤になって、結花がうつむく。いつもは強気の女の子が、こういう表情になるのが、ほんとにかわいくてしょうがない。まだまだ、うぶな部分もあるのだ
「…あ、お湯沸いたから、準備してくるね」
 照れ隠しをするためか、タイミング良くお湯が沸いたのに気がついて、結花が台所へと向かう。
「お、サンキュ」
 輝鋭はそれをなにかほほえましく感じながら、のんびりとテレビを眺めた。
「輝鋭クン、牛乳はどれくらい?」
「いつもどおり」
 もはや、この「いつもどおり」で分かってしまうほどの仲にもなった。もう、結婚してるような感じにもとれる事がよくある。「くりえいた〜」のようにすんなりいかないとは思うけど、ずっと一緒でいられたらな、と輝鋭は思っている。
「はい、輝鋭クン」
「おぉ、サンキュー」
 結花が輝鋭の前にマグカップを置く。牛乳がたっぷりと入ったミルクティーが輝鋭のお気に入り。結花も最近はそれに影響されてか、気を使ってかわからないが、牛乳を多めに入れるようになってきている。
 マグカップに入ったミルクティーを一口すする。いつもと変わらない、ちょっとまろやかな味わいがする。
「うん、今日もうまいぞ。結花」
「えへへ、ありがと」
 結花がにこっと笑って、自分もミルクティーをすすった。
「ね、輝鋭クン。前から聞きたかったんだけど」
「ん?」
「あそこの写真に写ってるの、輝鋭クン?」
 結花が、食器棚の上に飾ってある写真立てを指差して聞く。
「あぁ、ほうよ。オレが、前の会社にいた時の写真」
 黄色いヘルメットをかぶって、検査ハンマーを片手に機械の点検をしている姿が写っている写真。いちばん手前、でかでかと写っているのが若かりし頃の輝鋭だ。今だって十分若いけど。
「なんだか、今だと想像できないような仕事してたんだね」
「そうか? …まぁ、そうかもなぁ」
 昔から背が高い割に細い体つきだった輝鋭。前の会社にいたころはけっこう力仕事も多く、そこそこ肩もガチッとしていたのだが、今となってはそんなのも消えている。
「総務部の人がな、仕事中の写真を部内誌に載せるって、撮ってな。ほいで、オレがやめる時に記念にってくれたんだよ」
「ふーん。…今とぜんぜん違うんだね…」
 なにか感心するような声の結花。
「キツイ仕事も多かったし、ホコリだらけになって仕事してたしな…」
 昔を思い出すと、なにか懐かしい。あのころキツイキツイと思ったいた仕事も、今となってはいい思い出だ。
「ね、その仕事と今の仕事、どっちがよかった?」
「ふむ…。そやな…」
 結花の質問に、輝鋭がちょっと考える。
「前の仕事も今の仕事も、オレが好きで就いた仕事だしな…。今の仕事に変わったのも、なんかあの仕事にちょっと行き詰まりっつーか、限界みたいなもんを感じてたしなぁ…」
「…悔いとか、残ってるの?」
「悔いが残るようじゃったら、最初っからやめてないけん」
 ふふん、と輝鋭が笑うように言う。
「何よりな、今の仕事を始めたからこそ、結花と出会えたんじゃけえ。オレは、すごくよかったと思うぞ」
 そう言いながら、結花の頭を優しく撫でる。
「ふふ、そうだね」
 頬を赤らめて、ちょっとはにかむような表情の結花。輝鋭は、しばらく結花の頭を撫でつづけた。


「輝鋭クン、これどこに置いたらいいかな?」
「あぁ、そうやな…。このダンボールの中に入れといて」
 輝鋭の部屋で、なぜかふたりで大掃除が始まる。「せっかく布団を干してるんだから、掃除もしたら?」と結花が提案したのが始まりなのだ。
 よく考えたら、輝鋭は年末の大掃除をやっていなかった。それに、今までヒマが無かったから日常的に掃除機をかけたりはしても、物の整理はやっていなかったのだ。
「よっこらせ…」
 クローゼットの中にしまってあるダンボールの中身を確認して、いらない物を取り出しては中身を整理、まとめてまた戻していく。1年ちょっとの間に貰ったり買ったりして物がどんどん増えていくので、ダンボール箱も半端じゃなくなってくる。時々売りに出したり、事務所を通してプレゼントの商品にしたりと処分はしているが、それでもまだ結構な量がある。それでも、結花とふたりで協力してやっていけば、お昼ご飯をふたりで食べてから始めた大掃除も、2時間ほどすればきれいに片付いてきた。
「悪いな、オレがズボラなばっかりに」
「ううん、いいよ。だって、輝鋭クンと一緒にいられるんだもん」
 にこやかな顔で結花が言う。その顔を見ると、輝鋭も自然とやる気が出てくるのだ。
「ひとりでやるのはたいぎいし…」
「…たいぎい?」
 輝鋭の言葉を聞いて、結花が不思議そうな顔で聞く。
「…あぁ、これ広島弁だったな…。『めんどくさい』って意味だな」
 ついつい、出身地の言葉が出てしまう。素に戻ったりすると、自然と出てしまうのだ。ケンカも広島弁でするなぁ…。
 そういえば、以前ゲーム製作の作業をメイプルの事務所でやっていて、プログラマーに「この娘のシナリオはみやすいけぇのぉ」と言ったら、「何が?」と聞き返された事があるのを思い出した。「みやすい」とは「簡単」と言う意味なのだ。学校なんかの試験後に使ったら、あらぬ誤解を受けそうだ。
「…輝鋭クン」
「お、なに?」
「これ…」
 結花がダンボールのひとつをあけて、なにかあきれるような表情をしている。そのダンボールの中を覗くと。
「…あぁ、…まだこんなにあったんよね…」
 中身は、「その手」の写真集がぎっしりと詰まっていた。本棚に収まりきらない物とか、あまりお気に入りでないものはここにしまってあったのだ。
「あんまし使わんくなったし、処分のしようがないんよね〜…」
 むぅぅ、と輝鋭が唸る。このご時世だから、古本屋で売るわけにもいかないし、かといってその辺にポンと捨てるわけにもいかない。
「あんまり使わなくなった…?」
「結花のおかげだぞ」
 輝鋭はそう言って、おでこをこつんと結花にくっつける。ちょっとして、結花の顔が赤くなってきた。
「そ、…そ、…そんな事いきなり言わないでよぉ」
 顔を赤くした結花が、照れ隠しに輝鋭をポカポカ叩く。
「ありがとな、結花」
 ポカポカ叩いている結花の手を止めて、ほっぺたにちゅっとキスをする。
「むー…」
 顔を赤くしたままの結花が、ちょっと不満そうな顔をする。輝鋭にペースを取られて、ちょっと不満なのかもしれない。
「ほら、掃除続けるぞ」
 輝鋭が笑いながらぽむっと結花の頭を撫でて、ふたりは掃除を続けた。


 掃除が終わって、ふたりでちょっと休憩してから、ふたりで近くの商店街まで買い物に出る。今日の晩ご飯の買い出しなのだ。
「輝鋭クン、いつもどうやって生きてたの?」
「んー…。家にいる時は、お茶を飲むくらいしかないしな…。コンビニ行けば食べるものはなんだってあるし…」
 この便利な世の中。冷蔵庫の中がほとんど空っぽでも、手持ちの金さえあれば生きていける。輝鋭の家のそこそこの大きさの冷蔵庫も、ほとんど空っぽだった。ミネラルウォーターが数本、牛乳、酒類。あとは冷蔵保存するような調味料がちょっと。冷凍庫に至っては、氷があるだけだった。
「でも、ワケのわからないものがあるよりはマシだろ?」
「…それはそうだけど」
 なにやら、いろいろと買いこんで、食べずに賞味期限を大幅に過ぎるCMよりかは、明らかにエコロジーである。輝鋭の冷蔵庫の中身だって、賞味期限切れしているものはなかったのだから。
 そんなわけで、買い出しついでの買い物。ひとりで買い物に行くよりかは、結花と一緒のほうが数倍楽しい。
「輝鋭クン、今日はなに食べたい?」
「なんでもええぞ。結花が作れるようなもんで…」
 とはいうものの、あの時のおにぎりの形を見て、結花の料理の腕はだいたい想像がつく。ここだけの話、おにぎりなら自分の方がうまく作れるよなぁ、と輝鋭は思っている。
「…でも、ママと違って、わたし料理のレパートリーあんまりないよ」
 結花が困ったような顔で言う。まぁ、そうだろうなぁ、と輝鋭は思って少し考える。
「…そやな。じゃあ、結花が一品なにか作って、オレが一品作るのでどうだ?」
「…うん、それならいいよ」
「じゃあ、決定な」
 輝鋭も料理をすることは嫌いじゃないが、忙しさに負けてここ最近は作っていない。今日くらいは久しぶりに作ろうか、と思ったのだ。
「それと、オレはもう一品、味噌汁作るから。結花に覚えてもらいたいのをな」
 輝鋭はそう言って、結花の頭をぽんっと撫でた。
「覚えてもらいたい?」
 結花が、ちょっと不思議そうな顔をする。
「ま、それはあとのお楽しみだ」
 輝鋭はそう言いながら、商店街の八百屋の前で立ち止まって、品定めを始める。結花も隣で、まじまじと野菜を見て選ぶ。
「おや、結花ちゃん。今日はお兄ちゃんと一緒かい?」
 世話好きの八百屋の主人が、結花に声をかける。結花がけっこう買い物に来るので、顔なじみらしい。
「うん、パパもママもいないから、輝鋭クンと一緒に晩ご飯なんですよ」
 なんか、自慢気に話をする結花。輝鋭からすれば、こっぱずかしい。
「ほう、そうかい。じゃあ、おいしい料理を作ってあげないとな」
 そう言いながら、結花が野菜を選んでいく。輝鋭も、一緒になって野菜を選ぶ。
「はい、おつり。いっぱい買ったねー。君もおいしい料理作ってあげなよっ!」
 主人がお釣りとともに、袋に入れた野菜を手渡してくれる。
「あ、ども。ありがとうございます」
 輝鋭はそれを受け取りながら、こっぱずかしそうに言う。
「じゃあ、また来るね」
「おう、待ってるよー。…おやぁ、柴田くん。今日もきれいな彼女連れてー。どう、今日はいいキャベツが入ってるよ!」
 ふたりが八百屋を後にしても、主人の威勢の良い声が商店街に響く。
「…賑やかな親父さんじゃのぅ…」
「うん…。でも、あそこの八百屋さんサービスがいいよ」
「ほうか…」
 今までスーパーで用を済ませていた輝鋭にとって、商店街はたまに通って何か買う程度だったのだ。これからは、顔を出してみようかな、なんて思う。
「あと、お肉買うけど」
「おう。オレも、豚肉がいるな」
「じゃあ、お肉屋さんだね」
 商店街をブラブラ歩きながらそれぞれいるものを買っていく。買い物が終わるころには、ふたりの手が買い物袋でいっぱいになった。
「たくさん買ったねー」
「せやな。よーし、おいしいもの作ろうなー」
「うん」
 日も西へと傾き赤みがかった道を、ふたりが何かうれしそうに歩いて家路へつく。ずっと、ふたりで幸せでいられればいいよなと、輝鋭も結花も思った。


 ふたりしてあまり大きくない台所に並び、それぞれが料理を作る。炊飯器から蒸気が吹き上がり、包丁で野菜を切る音や、炒め物をするフライパンの音が響く。そういえば、こんな音も実家を出て以来久しく聞いてなかったなぁ、と輝鋭は思った。
「お。ケガすんなよ」
 ちょっとおっかなびっくりの手つきで野菜を切っている結花を見て、輝鋭が苦笑いしながら言う。この手つきだと、たぶん自分のほうが上手だな、と輝鋭は思う。
「うー。大丈夫だよ。これでも、お弁当屋さんの娘だよ」
「…あんまし理由になってないと思うけどな…」
 苦笑いのまま首をかしげて、輝鋭がフライパンで作ったベーコンフレンチソースをほうれん草の上にかける。
「ほれ、フライパンあいたぞ」
 油をしみこませたキッチンペーパーでフライパンを拭いて、輝鋭が結花を見る。
「…危なっかしいなぁ。ケガしても、ギャルゲーみたいに指を舐めたりはせんぞ」
「ケガしないから大丈夫だもん!」
 ほっぺたをぷくっと膨らまして、結花はちょっと不服そうに言った。
「それに、本当にケガしたら、輝鋭クン絶対に指舐めてくれそうだもん」
「あぁ、有無を言わずに舐めるな」
 さっきの発言を撤回し、輝鋭が笑いながら言った。
「ほじゃけえ、ケガしてもいいぞ」
「やだよ。痛いもん」
 もう、絶対にケガなんかしないもん! と表情から読み取れる顔になった結花が、すごくかわいい。意地を張っているところが、まだまだ子供の証拠だ。
「よし、あとは炒めるだけだよ!」
 結花がフライパンを目の前に、よしっ、と気合を入れる。
「ヤケドすんなよ〜」
「…もう。大丈夫だよ!」
 輝鋭の言葉に、結花が半分怒ったように言う。
「結花のことが心配だから言うんだぞ」
 頬を膨らました結花をなだめるように、輝鋭は頭をぽむっと撫でて言った。
「ほーら。早く作らないと、メシが遅くなるぞ」
「…うん。よし、がんばるよ!」
 結花がもう一度気合を入れて、野菜から炒め始める。輝鋭もちょっと心配で、後ろで腕を組んで見ている。野菜の火の通り加減を見ながら、次々と別の野菜をいれて行って、最後に肉を入れ、味付けをしていく。輝鋭からすれば、意外なほどの手際の良さに、ちょっと驚いてしまう。
「出来たっ!」
 あらかじめ出していた皿に盛り付け、結花が満面の笑みを浮かべて輝鋭の方を見る。なにか、「どうだー」とでも言わんばかりの表情。
「おー、やるじゃねえか。うまいことやってたぞ」
「えへへへへー。どう、すごいでしょ? わたしのいちばんの得意料理なんだからね!」
 腰に手を当てて、本当にうれしそうな顔の結花。ここまでの表情をされたんじゃあ、輝鋭もいじわるのしようがない。愛のパワーなんかなーなどと思いながら輝鋭も笑って、結花の頭をなでなでする。
「よしよし。メシにするぞ〜」
 ダイニングのテーブルを片付けつつ、出来たおかずを並べていく。
「えへへ。こうすると、なんだか新婚みたいだね」
「だいぶ早いけどな」
 ふたりでくすっと笑って、手を合わせる。
「よし、いただきます」
「いただきまーす」
 テーブルの上に並んだ、と言うか、普通の一般家庭でもありそうな料理。結花の作った、野菜たっぷりの肉野菜炒め、輝鋭の作ったほうれん草のベーコンフレンチソースサラダと豚汁。そしてごはん。あと、漬け物をちょん、と置いてある。豪華でない分、なんだか新婚度が微妙に増す気がするのだ。
「これ、…輝鋭クンが言ってた、覚えてもらいたいっていうの?」
「そ。覚えてもらいたいもの。豚汁な」
 結花と輝鋭が一口すする。
「あ、おいしい」
「サツマイモとか大根とか、いろんな野菜がいっぱい入ってるからな。オレの母さんがよく作ってくれてな。実はオレの好物」
「ふうん…。ちょっと意外かも」
「すぐには無理だと思うけど、…結婚するまでに覚えて欲しいな〜、と思ったりする」
 輝鋭がそう言った途端、結花の顔が真っ赤に染まり上がった。
「う、う、…うん。わかった」
 結花が顔を赤くしたまま、なんだかすごく恥ずかしそうにうつむいて返事をする。それを見た輝鋭は、笑い出しそうになるのを抑える。
「ね、…輝鋭クン」
「んー?」
「いつか、…輝鋭クンのお母さんに豚汁の作り方、教えてもらいに行かせてね」
「…そうだな。まぁ、そのうちな」
 体があったかくなったのは、豚汁のせいだけじゃないだろうな〜と思いながら、輝鋭は答えた。
「ところで、結花の野菜炒めも、結構いい味が出てるな〜」
 野菜にしっかり火が通ってるだけじゃなくて、野菜本来のしゃきっとした感じもしっかりとある。しかも、味も焼肉のタレ風だけれど、ちょっと違う感じがするのだ。
「えへへ。私の数少ない得意料理だもん」
 まだ頬を染めたままの結花が、にこやかに笑いながらいう。
「それに、そのタレ。うちの秘伝のタレなんだからね。お弁当屋さんのお客さんにも、評判がいいんだから」
「ほー、そうか」
 これを食べてると、すごく食が進むのだ。ごはんをいくらでも行けそうな、そんな気がするほどおいしい。
「ま、オレのそっちの方は、ほとんど手抜きの居酒屋メニューみたいなもんだしな」
「ふぅん。…ほうれん草って、こういう料理にも使えるんだね…」
 ベーコンをフレンチソースで炒めて、ほうれん草にかけただけの単純な料理。はっきり言って、これしか思い浮かばなかったと言うのが本音のところ。
「けっこう、おもしろい料理知ってるね。輝鋭クンって」
「ん。まぁ、料理するのは嫌いじゃないしな」
 ふたりで向かい合って、テレビを付けつつも楽しく夕食をとる。結花とふたりっきりの団らんの時。輝鋭にとっては、こんな楽しい夕食も、ものすごく久しぶりのような気がした。それだけにふたりとも食が進んで、結局、おかずは元より、炊飯器の中のごはんも、鍋の中の豚汁も、ほとんどがなくなってしまった。
「ごちそうさま。はふぅ…。いっぱい食べたね…」
「あぁ。…なんか、展開的に『くりえいた〜』と似てるな…」


「へくしっ!」
「あれ? 博樹さん、風邪でもひいた?」
「いや、…大丈夫だけど? ん?」
 リビングでのひとときの中、博樹は腕を組んで考える。
「…誰か噂でもしてるかな?」


 ふたりそろって後片付けをすると、残っているイベントはあと2つ。もはやメインイベントと言っても過言ではないふたつである。
「輝鋭クン。先にお風呂いいよ」
「お、わかった。…一緒に入るか?」
「うー…。…恥ずかしいから、…ちょっと考える」
 結花が困った顔をする。本心的には一緒に入っても良さそうな感じだが、恥ずかしいと言うのがまだ先行してるのだろう。そもそも、もう何度かふたりで体を重ねて見て来てはいるが、お風呂場でと言うのはまだないのだ。お風呂場独特の雰囲気の中、このふたりが一緒に入ったらどうなるかは、考えるまでもない。
「んまぁ、なかなか慣れれるようなもんじゃないからな。…じゃあ、先に入ってるぞ」
「うん。ごゆっくりどうぞ」
 残った後片付けをするために、結花はまだ台所に立っているようだった。


「あずさは、こうやって一緒に裸になってるのは慣れたか?」
「うにゅ…。そんな、慣れれるようなものじゃないよぉ…」
「でも、最近はよく一緒に入ってるもんな」
「うん。博樹さんがいる時は、だいたい一緒だね」
「だからと言って、毎回毎回してるわけじゃないけどな」
 湯船に浸かったふたりが話をする。これくらいの狭さが、程よい密着感でいいのだ。
「な、あずさ」
「ふに、なぁに? …きゃぁん! 不意打ちしちゃだめだよぉ」


「今日は、えらく外野がやかましいの…」
 湯船に浸かった輝鋭が、頭の上のあたりをパタパタと手で扇ぎながらつぶやく。
「ふぅ…」
 あったかいお湯に浸かりながら、輝鋭が考える。
「これで結花が入ってきてくれたら、すんごくいいんだけどなぁ…」
 それはギャルゲーとかの典型的な展開かぁ、などと思いながらボケーっとする。この微妙な大きさの湯船が、程よい密着感を作り出しそうでいいかもしれない。
「それで背中流してくれて、オレがそれのお返しに背中洗って、そこで…」
 妄想を頭の中で繰り広げながら、ブツブツとつぶやく。傍目から見れば、非常に怪しい雰囲気。
「輝鋭クン?」
「おぉぉぅっ!?」
 扉の向こうから突如結花の声が聞こえ、妄想の世界に入っていた輝鋭が驚いて声を上げる。
「ど、どした?」
「…わたしも、…入っていいかな?」
「…え、…おぅ。…いいぞ」
 なんでそんなベタな展開に、と思いながらも、輝鋭は作者に感謝する。…なんか変な文章。
 ちょっとしてから、結花が恥ずかしそうに入ってくる。いきなり裸になっているのだから、相当恥ずかしいだろう。入ってきた瞬間を、輝鋭はしっかりと眼中に治めて記憶にしっかりととどめる。まさに眼福。少しだけ成長してきても、まだまだスレンダーなからだ。右腕で胸を、左腕で下半身をちょっと控えめに隠している。戸を閉めるため後ろを向いた時に見えた小ぶりのおしりが、これまたすごくかわいい。
「いらっしゃい」
「えへへ…」
 結花が恥ずかしそうに笑って、桶でからだにお湯をかける。輝鋭も湯船にスペースを空けて、横に結花を入れてあげる。
「はふぅ、…いいお湯だね」
「そうだな。しっかり暖まれよ」
「うん」
 ぽちゃん、と結花がお湯を手の平にすくって落す。一緒に入っているのが恥ずかしくて、お湯をもてあそんでいる。
「なぁ、結花」
「なに?」
「一緒に入ってくれてありがとな」
「…うん」
 頬を染めた結花が、にこっと笑う。その顔があんまりにもかわいいものだから、輝鋭も思わず顔がほころぶ。頬が染まっているのは、お風呂に入っているからじゃないだろう。
「…だってね。…せっかく泊りに来てるんだもん…。一緒に入らないと損だもんね…」
「…そうだな。なかなか、泊りに来る事はないもんな」
 普段から「いたしたあと」に結花がシャワーを使うことはあっても、一緒に入る事はなかった。せっかく新婚気分に浸っているのだから、結花も思い切ったのだろう。
「ね、輝鋭クン。背中流してあげようか?」
「お、そうか。じゃあ、頼むな」
 湯船から出て、結花に背中を向ける。ボディソープをタオルにつけて、結花が背中をこする。背中なんか流してもらうのは、何年ぶりだろうか。
「輝鋭クンの背中って、けっこうおっきいんだね」
「そうか? まぁ、俺は背が高いしの」
 これでボディウォッシュなんかしてくれたら最高なんだけどなー、と輝鋭が思う。
「間違っても、わたしはボディウォッシュなんてしないからね」
「ふはははは、…わかったわかった」
 考えていた事を見透かされたかのように結花に言われ、輝鋭も思わず笑う。結花が広い輝鋭の背中をこする。輝鋭にとっては、なんだかこそばゆい感じがする。背中を一通りこすると、お湯でじゃ〜っと流して結花が輝鋭の背中をぱちんと叩く。
「はい、終わったよ」
「よっしゃ。じゃあ、今度はオレがやってやろう」
「え、いや、いいよ」
「ま、そういわずに、やらしてくれよ」
「だって、…何かヘンなことしようと思ってるでしょ?」
「くそ、バレてるか」
 バレてるもなにも最初っから結花にはわかっていそうだったが、輝鋭はわざとらしく言った。
「でも、背中くらい流させてくれよ、な?」
「うー…、うん。…じゃあいいよ」
 結花と輝鋭が入れ替わって、今度は小さな結花の背中を輝鋭がこすり出す。
「どう?」
「えへへ、…なんかいい気分」
 顔を覗きこむと、ちょっと頬を染めてなんだかうれしそうに見えた。これなら、別にヘンなことしても怒りはしないだろうな、と思ってタオルを背中から前に移す。
「きゃぅ! き、輝鋭クン!」
「なに?」
「ヘンなことしちゃダメだってば」
 ちょっと驚いた声で、結花が輝鋭の手を持つ。
「何がヘンなことなん?」
「だ、…だから、…背中だけでいいよ」
「オレは前も洗ってあげたいんだよ。…ダメか?」
「…そ、その」
「じゃ、いいんだな」
 明確な答えを出さない結花に対し、勝手に答えを出した輝鋭が結花のからだをタオルで優しく洗い始める。
「そ、そんなぁ…」
「いやだったら、イヤって言えばいいだろ?」
「だ、だってぇ…」
 ボディーソープがからだ中ににゅるにゅると付けられる。自分で洗うよりも、ひとに洗ってもらうと何でこんなに変な感じになるんだろうかと、結花は思う。
「き、…輝鋭クン…」
 さっきよりも頬を染めた結花が、目線で輝鋭になにかを訴える。
「いいんだな?」
「…うん」
「…でも、…またベッドでちゃんとしてあげるからな」
 ほっぺたにキスをして輝鋭がタオルを離し、結花の背中側から手で直接からだをこする。
「は…、ひゃぅ…」
「気持ちいい?」
「うん…」
 ボディーソープでぬるぬるになったからだを、輝鋭の手がいやらしく走る。小さな胸の膨らみを、ぬるぬるとした感触でつつまれて、結花も気持ちが高ぶる。
「ひゃぁ、…あふぅ…」
 輝鋭の左手が結花の胸を優しく揉みながら、右手をそっと脚の間に滑りこませる。上から垂れてきたボディーソープが秘部の筋に添って流れて、それをすくうように指を動かし、秘部に塗りつける。
「あっ…、あんっ…」
 まだスリットに隠れたままのつぼみに輝鋭の指が触れて、指が前後するたびに結花のからだがぴくぴくと震える。それとともに、ボディーソープではない、ぬるっとしたものも結花の秘部から感じられ始めた。
「結花。ひとりでこんな事したこと、あるか?」
 輝鋭がやさしい顔で聞くと、結花は顔を赤くして、なにも言わずにこくんとうなづく。そんな結花がものすごくかわいらしくなって、輝鋭は唇に優しくキスをする。
「大好きだぞ、結花」
「…うん、…輝鋭クン。…あんっ」
 再び結花の胸と秘部を優しく攻める。結花の切ない吐息が、輝鋭の耳にはっきりと聞こえる。結花のつぼみに親指を添えたまま、人差し指を秘部に中にいれる。
「あっ…、あぅん…」
 結花の中は、もう液で一杯に満たされていた。内壁がうごめいて輝鋭の指に絡みつき、結花の快感を伝えていた。
「き、輝鋭クン…」
「ん、どした?」
「わたしも、…輝鋭クンにしてあげたいから…」
 結花が甘い声を出して言う。
「わかった…、じゃあ…」
 結花を椅子から下ろして、椅子は端っこにどけておく。そして、結花を後ろ抱きにする。
「ほら、これならいいだろ?」
「う、…うん」
 結花の股の下から、輝鋭のモノがにゅっと突き出している。これで腰を動かせば、素股になる体勢だ。
「結花も、オレを気持ち良くさせてくれよな」
「うん…」
 もう一度ボディーソープを手にとって胸や秘部に塗りたくり、再び結花をいじり始める。
「ひゃぁ、あぁぅ…」
 結花が甘美な声をひとつ上げると、はっと気がついて、自分もボディーソープを手にとって、輝鋭のモノにそれを塗りつける。
「うぁっ…」
 カリの下の部分を中心に、結花が指でモノを優しくいじる。輝鋭にも快感が伝わり、そのたびにびくびくと震え出す。負けじと、輝鋭も結花の秘部と胸を同時にいじる。
「ひゃぁぅ、あぁん…」
「うくぅ…、はぁっ…」
 ふたりの吐息がお風呂場の中に響き、熱い空気がより熱くなる。結花が刺激を受けると、指先にそれが伝わって力が入り、輝鋭への刺激を強くする。輝鋭も、その刺激が指先に伝わって、結花への刺激を強くしていく。
「あんんっ…、あぅんん…」
「くぅ…、うぁ…」
 結花にモノを触られているというだけで興奮するのに、秘部から流れ出した液体が輝鋭のモノへとかかって、先走りの液とともに混ざって、それが、輝鋭の興奮をさらに高めていく。
「き、輝鋭くぅんっ…」
「あ、…あぁ、結花…」
 結花の顔を抱き寄せてキスをする。それとともに、ふたりとも攻める強さが一段と強くなっていく。
「んんぅぅっ…、んくぅ…」
「んぐっ…、う…」
 結花の体が、ぴく、ぴく、と小さく動き始める。
「はわぁぁ、き、輝鋭くぅん…、輝鋭くぅん…」
 口を離して、結花が輝鋭の名を呼ぶ。それと共に、結花が中に入ったままの輝鋭の指をぎゅっと締め付け、自らの手でモノのいちばん刺激を受けるところを強くこする。
「あ…、ゆ、…結花っ…」
 結花がいってからほんの寸秒して、輝鋭も自分の精を吐き出していった。
「ふぁ、…あぅ、…輝鋭、クン…」
「あ、…あぁ、…結花」
 いったままの状態で、ふたりがキスをする。ふたりは、しばらくそのまま放心状態になっていた。


「はぁ、…暖かいな」
「うん…」
 ぽちゃん、と水の滴る音がひとつ聞こえる。
「しっかり暖まっとけよ」
「うん、輝鋭クンもね」
 さっきしていたのと同じような、後ろ抱きの状態でふたりが湯船に浸かる。輝鋭が手で結花の肩にお湯をかけてあげる。
「すまんな。お風呂の中で、体力使わせちゃって」
「えへへへ、いいよ。…わたしだって、それくらいして欲しくって入って来たんだからね」
「そうか。それなら良かったな」
 結花の頭をなでなでする。
「だってね、…ひとりで思ってしてた事がね、…こうやって、現実になってくれたんだもん」
 その言葉を聞いて、輝鋭はちょっとの間考え込む。
「…あぁ、…そっか。…オレも悪いことはしてないな」
「えへへへへへ。そうだね」
 輝鋭が、くっくっく、と笑いながら言ったのを聞いて、結花も思わず笑う。
「よっしゃ、上がるぞ」
 体を暖めてふたりが脱衣場へと上がる。2枚のバスタオルを輝鋭が出して、ひとつは結花に頭からかぶせる。
「もうそのままベッドまでおいで。きちんと頭と体、拭いてな」
「うん」
 輝鋭も頭と体を拭くと、一足先に自分の部屋まで行ってベッドに座る。ちょっとしてから、からだにバスタオルを巻いた結花もやって来る。そういえば、お風呂では気付かなかったけど、三つ編みを解いた髪の毛が軽くウェーブをかけたように見えて、結花がちょっとだけ大人っぽく見えた。
「えへへ、お待たせ」
 バスタオルを巻いているということ自体、今までなかったことだから、結花もちょっと大人の気分なのかもしれない。表情もすごく嬉しそうだし、なんだかちょっぴり余裕がありそうな感じに映る。
「おう、おいで」
 ベッドに寝そべった輝鋭の横に、結花も寄り添う。優しく頭を撫でながら、胸のところで閉じているタオルを開き、結花のスレンダーなからだを露出させる。
「輝鋭クン、あっ…」
 小さな胸の膨らみを手でやさしく揉みながら、かわいく吐息を上げた口を唇で塞ぐ。
「んっ…、んむっ…」
 結花の唇を舌であけて、ふたりが唾液を交換する。舌と唇が絡む音と、互いの唾液が交じり合う音が輝鋭の部屋に響く。
「んふっ…、ちゅっ…、んんぅっ…」
 輝鋭が結花の胸をやさしく触るたびに、繋がった口から小さな吐息が漏れる。
「はぁ…、輝鋭クン」
「うん、…結花」
 ふたりで見詰め合って、くすりと笑う。そして、結花の頭を優しく撫でると、もう一度ちゅっとキスをした。
「あ、…あん」
 唇からうなじを通って、胸のふくらみまで、順番にキスをしていく。そのたびに、小さな声が結花から漏れる。
「気持ちいい?」
「うん…」
「そうか、よかった」
 胸のてっぺんにある、薄いピンク色をした突起を舌でやさしく舐める。
「ひゃぁ…」
 結花の反応を見ながら、舌先と唇を使っていじる。最初はやわらかいままだった突起も、小さいながらも次第に硬くなってくる。
「あっ…、あぁん…」
 舌先でつんつんと弾き、息を軽くふっ、と吹き掛けると、今度は口全体を使って胸にかぶりつく。
「あ、や、…食べちゃダメだよ」
 柔らかい感触が口の回りや中にまで伝わってくる。輝鋭にとっては、本当に食べたいくらいおいしそうな膨らみ。
「あんまりおいしそうなもんだから、な」
 輝鋭がそう言いながら結花の頭をこしこしとなでると、両手をわき腹から撫でるように動かし、腰のあたりから太ももまで持っていく。そして、すこし細いけれどすべすべとしたふとももの感触を手で感じる。
「すべすべしてるな」
「うん、…女の子だもん」
 なんだかよくわからない会話をしながら、ふたりがくすっと笑う。輝鋭は目線の先を結花の顔から下に移し、まっすぐ伸ばした足に隠された、結花の大切なところを見る。閉じた脚の間に、すこし膨らんだ逆三角形のエリアが作られていた。下向きの頂点には、秘部へと続くスリットの筋が顔を出していて、その辺りには何も生えていない。
「足、…いいか?」
 輝鋭の問に、結花がこくんと頷いて答える。輝鋭がそっと足を開くと、小さく息をするように少しだけ口を開いた秘部があらわになった。小さなつぼみがちょこんと顔を出し、初めての時とまったく変わっていないそれを見るたび、輝鋭の興奮が高まる。
「あんっ…」
 少し膨らんだ土手を指で割開くと、キラキラと光る液が少しずつ流れ始めているのがわかった。その液を指ですくいとって、あらわになっているつぼみに塗りつける。
「ひゃ、あぁん…」
 つぼみに触れた瞬間、結花のからだがびくっと動く。輝鋭は、指を続けて動かしつぼみに刺激を与える。輝鋭の指の動きと同調して、結花がかわいい声を上げる。なにか、輝鋭が結花を操作しているような感じだ。
「あっ、あっ、あんっ…」
 結花のからだに快感が走ると同時に、秘部からは液が止めど無く流れ始める。輝鋭はそれをさらに指に塗りつけて、つぼみだけでなく、秘部の土手の周りまで塗りつけて、全体を濡らしていく。
「い、…や、あ、…あ」
 次々と流れ出てくる液を指では抑え切れなくなり、輝鋭は舌を使って受け止める。そして、そのまま筋に添ってぺろんと舐める。
「ひゃぁぁん…、あっ…あぁん…」
 つぼみを舌の先でちろちろと動かすと、結花が動きに合わせて声を上げる。舌を秘部の中へと押しこんで、流れつづける液を受けとめ、それを全体へと広げていく。結花の分泌する液と輝鋭の唾液が交じり合う音が、いやらしく響く。
「ふぁ、…い、いいよぉ。…輝鋭クン、…いいよぉ」
 結花が声を上げると、輝鋭も一段と燃える。結花のかわいらしく、いやらしい声をもっと聞きたくなって、さらに結花を攻めつづける。
「はぁぁん…、あ…、ふぅん…」
 ひとしきり舐めて結花の秘部を見ると、そこはもうぐっしょりとなっていた。秘部から出る液が下へと流れ、結花のお尻の穴からシーツまでを濡らし、土手や恥丘のあたりはふたりの交じり合った液が塗りたくられ、部屋の明かりでいやらしく光っていた。
「結花、…いいか?」
「うん…」
 極限まで大きくなり、先っぽからは先走りの液まで出始めている輝鋭のモノを、結花が目線でちらりと見て、すぐに輝鋭の顔へと目線を移す。いつまで経っても、やっぱり局所を見るのは恥ずかしいのだ。結花の目線の動きを見てくすりと輝鋭は笑ったが、頭をやさしく撫でながら、結花にちゅっとキスをする。
「ちゃんと、付けるからな」
「うん…」
 まだ初潮が来ていない結花であっても、年頃の女の子なのだから、危ない事には変わりない。輝鋭は手早くコンドームをつけると、結花の上に覆い被さる。
「いくよ」
 結花が頷いたのを確認して、モノを秘部に添えて、ゆっくりと挿入する。
「あ、…あぁぅ」
 ずぷずぷずぷっと、小さな結花の中に輝鋭のモノが飲み込まれていく。初めての時ほどの抵抗はないけれど、それでもかなり強く、きゅうきゅうと締めつけてくる。でもそれが、輝鋭にとってはものすごい快感となって伝わる。
「結花、…大丈夫か?」
「うん、…大丈夫。…痛くないよ…」
 結花が、なにか輝鋭を安心させるような言葉で言う。結花にとっても、輝鋭のモノで一杯になってけっこうキツイのだが、幸せな気分と自身がうごめいてモノを締めつける感覚とで、気持ちがいいと感じていた。なによりも、大好きな人にこうされる事で、ものすごく幸せな気持ちになって来る。
「じゃあ、動くぞ」
「うん」
 ゆっくりと腰を浮かして、モノを引きぬいていく。今まで入っていたものを逃がすまいと、結花の中がモノを引きとめるような動きをする。カリの部分が出そうになったところで止め、再びゆっくりと挿入する。中で満たされた液が押しのけられ、結合部からじゅわっと出てくる。
「はわぁぁぁぁ、…ふぁぁぁぁ」
 ゆっくりとした動きに合わせて、結花が気持ち良さそうな息をする。
「はぁぁ、…ふぅぅぅん」
 時々、ほっぺたにキスをしたりしながら、だんだんと速度を速めていく。
「ふぅ…うぅん…、あっ…、あはぁん…」
 モノが結花の中を往復するたびに、結花からは少しずつ違う吐息が漏れる。なにも声を出そうとしているわけでないのに、自然とこんな声が出てしまう。結花がそう考えると、なんとなく自分がものすごくえっちな女の子ということを自覚してしまう。そして、くちゅくちゅという、いやらしい音がふたりの結合部から響き始め、その音を聞いて結花の頭もだんだん快楽でいっぱいになっていく。
「あっ、あっ、あっ、…あぁんんっ…」
 息も上がり、輝鋭の背中を抱きしめる力が強くなる。からだ中から汗が出始め、今日取り換えたばかりのシーツを、昼に干してふかふかだったベッドのシートまでも湿らせていく。
「あ、…い、…イイよぉ…、輝鋭クン…、いいよぉ…」
 結花の言葉通り、結花の中は輝鋭のモノをぎゅうぎゅうと締めつける。結花の快感を代弁する様に、内壁が淫らにうごめいて輝鋭をどんどん高ぶらせていく。
「う、…くっ、結花っ…」
 あまりの快感に、輝鋭が思わず声を漏らす。その声を聞いて、結花は足を輝鋭の腰へと絡める。
「う、あぁっ…」
 輝鋭のモノが一段と締めつけられ、だんだん、終わりが近づいて来るのがわかる。体が熱くなり、腰に何かパワーのようなものが集まってきている。
「き、輝鋭クン…」
 限界が見えてきているのは、結花も同じだった。内壁がこすられるたびに、体中にその快感が伝わっていく。頭の中がえっちな事でいっぱいになり、指先から髪の毛の先端、からだ中隅々までもが性感帯へと変わってしまったかのように感じる。
「あ、…ゆ、結花。結花…」
 結花を頭からひしっと抱きしめ、腰をさらに激しく動かす。結合部から液が溢れ出し、ふたりが交わる音と声が部屋中に響く。その音がふたりの耳にもはっきりと届き、官能が最大限まで高ぶる。
「あぁぁん…、あぁぁ、…き、輝鋭くぅん」
「ゆ、結花ぁ…」
 結花が輝鋭を締め上げた瞬間、輝鋭のモノが結花の中でビクンと大きく動き、どくどくと脈動を続ける。
「あ、…はぁ、…ゆ、…結花」
「ふわ、…は、…はぁぅ。…うん。…輝鋭クン」
 いった後も、しばらくそのままでふたりが抱きしめあう。脈動を続けていたモノもやがて治まり、ゆっくりとしおれていく。同じように、脈動を続けていた輝鋭のモノを締め上げていた結花も、ゆっくりとその力を解放して、輝鋭を縛りから解いた。それでも、ふたりが繋がったままでちゅっとキスをし合う。
「輝鋭クン、…うれしいよ」
「ん? なんが?」
「輝鋭クンが、わたしの中で気持ちよくなってくれるのが、うれしいよ」
「…そうか。結花も、なんかうれしいこと言ってくれるの」
 頭をなでなでして、ほっぺたにキスをする。結花も、はにかむ様に笑って輝鋭にお返しのキスをした。
「よいしょ…」
 輝鋭が結花から離れて、上半身を起こす。モノはなんとなく情けないが、既にぐたっとなっていて、ゴムも簡単にするっと外せた。それを見てひとりくすっと鼻で笑い、ゴムの口を結んで縛り、ゴミ箱へと投げ捨てた。
「疲れたか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「ははは。若いのぉ、結花は」
 結花の横に寝転がって、結花の頭をやさしく抱きしめる。結花もからだを輝鋭に預けてきて、ふたりがぴったりとくっつく。小さな胸が輝鋭の体にむにゅっと触れて、すごくいい感触を伝えた。
「…あ、いけね」
 輝鋭がそうつぶやいた時にはもう遅い。モノがまたもむくむくと反応を示し、戦闘体制になってしまう。まさかこのままにしておくわけにもいかないし、だいたい一度大きくなってしまったものを元に戻るまでほったらかしにするのもどうかと思う。
「…結花。もっかい、…しようか?」
 結局、輝鋭もベタな選択に落ちつく。でも、もう1回したいくらいの気力も体力も、雰囲気もある。
「…へへ。うん、いいよ」
 結花から輝鋭にキスを求めてくる。輝鋭はそれに応えてやると、結花の胸をやさしく触りはじめた。やわらかいままのてっぺんが、すっごくいい感触で欲情をどんどんと高ぶらせてくれる。けれど、すぐにそれも固くなって、結花からかわいい吐息が漏れた。秘部をそっとまさぐってみると、くちゅっという音がした。
「結花も、えっちな性格してるよな」
「輝鋭クンだって」
「ふはははは。まぁ、結花はまだ若いし」
「えへへ。輝鋭クンも十分若いよ」
 今度は、結花が自ら輝鋭の上の乗る。ふたりはもうしばらく夜を楽しんだ。


「…ん」
 窓の外がすっかり明るい事に気がつき、輝鋭が自然と目を覚ます。
「んぁぁ…。…何時じゃ」
 気だるそうな顔をして、枕もとの時計を見る。11時前。こんな時間までしっかりと眠ってしまった。
「…ふぅぅむ」
 小さく息をついて目線を時計から自分の隣にいる結花に移す。
「すぅ…、すぅ…」
 無防備な表情をして、ほんとにスヤスヤとよく寝ている。この表情が、もうかわいいったらありゃしない。いくら夜はえっちであっても、こうやって寝ている時の顔はまだまだ普通の子供だ。ただ、結花の姿が全裸であることを除けば。
「よく寝てんなー…」
 あのあと、もうしばらくとか言っておきながら、結局何回やったか覚えていない。何時までしたのかも覚えていない。ふたりで、「そろそろ疲れてきたね〜」などといいながらも、いつまで経っても元気なふたりのため、何度も何度もしてしまったのだ。結局、もう疲れて眠くなったところでそのまま寝ることにしたのだ。ふたりとも、裸のまま眠りについてしまい、こうして朝を迎えた。
「すぅ…、すぅ…」
 規則正しい寝息を立てて、結花が輝鋭にからだを預けたまま寝ている。小さな膨らみの胸も、白い肌も、ぷにぷにとして柔らかい女の子のからだも、全部見せたまま寝ている。あまりに無防備過ぎて、いたずらだってデジカメで撮影だっていくらでも出来そうなのだが、そんな気はぜんぜん起きない。
「いつまで寝てるつもりだ、結花」
 やさしく髪の毛をかき上げてあげながら、輝鋭がつぶやく。輝鋭の体をしっかりと抱きしめて寝ているため、あんまり大きく動くわけにもいかない。まぁ、前夜かなりの運動をこなしたから、ずっと寝ていたって仕方ないだろうな、と思う。なにせ、干してふかふかだったベッドのシートは、妙にじっとりと湿ってしまい、ふたりの匂いがシーツに染み込んでしまっていた。昨日干したのに、今日も干さなきゃいけないよなー、と思いながらも、結花が起きるまではこうしてかわいくてしょうがない大好きな結花の寝顔でも見ているか、と輝鋭は思った。
「いかん…」
 しかし輝鋭は、ひとつ困った事を発見してしまった。
「…トイレ行きてぇ」
「…すぅ、…すぅ」

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